概要
シリア南西部、メソポタミア・アラビア半島・地中海を結ぶ交通の要衝に発展した世界最古級の都市。ローマ、ウマイヤ、オスマンなど各時代の文化と宗教が重なり、ウマイヤ・モスクをはじめ約125の歴史的建造物が残る。
見どころ
聖地の層を受け継ぐウマイヤ・モスク
アッシリアの聖地、ローマのユピテル神殿、ビザンツの聖ヨハネ聖堂を経た場所に立つ8世紀初頭のモスク。多柱式礼拝空間とモザイクが後世へ影響した。
商都の洗練を伝えるアズム宮殿
18世紀半ばに建てられた宮殿は、石を幾何学的に組み合わせた壁面と中庭をもつ。ローマ遺構や聖堂、廟とともに旧市街の多層性を伝える。
地理
ダマスカスはシリア南西部に位置し、メソポタミア、アラビア半島、地中海世界を結ぶ交通の結節点にあたる。この立地により、古代から交易と人の移動が続き、商業都市として「砂漠のダイヤ」と呼ばれる繁栄を築いた。
旧市街にはローマ時代の列柱と凱旋門、イスラムのモスク、キリスト教の聖堂、宮殿や病院など、異なる時代・文化・宗教が残した約125の歴史的建造物が密集する。都市の街路と建築のなかで、長期にわたる文化交流の層を読み取れる。
歴史
ダマスカスは紀元前3千年紀に成立したとされ、旧約聖書にも登場する世界最古級の都市である。『旧約聖書』ではアブラハムが旅の途中に訪れ、『新約聖書』ではキリストと聖母マリアの避難場所とされる。交通の要衝であったためローマ帝国、ウマイヤ朝、オスマン帝国などの支配を受けたが、その間も商業都市として独自の地位を保った。
8世紀初頭、ウマイヤ朝のアル・ワリード1世は、アッシリア時代から聖地とされた場所にウマイヤ・モスクを建設した。現存する世界最古のモスクとされるこの建物の敷地には、ローマ時代のユピテル神殿、ビザンツ時代の聖ヨハネ聖堂が先行し、現在のモスク内には洗礼者ヨハネの首を葬ったとされるドーム型墓所がある。多柱式礼拝空間とモザイク装飾は後世のイスラム建築に大きな影響を与えた。
旧市街には12世紀半ばの病院マーリスターン、18世紀半ばのアズム宮殿、エルサレムを奪還したサラディンの廟も残る。1979年に世界遺産へ登録され、2011年に範囲が変更された。内戦が続くなか、2013年にはシリアの世界遺産6件すべてが危機遺産リストに記載された。
