概要
カンボジア北西部シェムリアップ州に広がる、9~15世紀のアンコール朝の歴代王都と寺院を含む文化遺産です。アンコール・ワットの精緻な浮き彫りと、アンコール・トムのバイヨンに並ぶ巨大な四面仏顔は、クメール文明の建築・彫刻・宗教観を伝えます。
見どころ
アンコール・ワットと「乳海攪拌」の回廊
水濠と参道の軸線上にそびえる本殿と、回廊を埋める精緻な浮き彫りが見どころです。神々とアスラが大蛇ナーガを引く「乳海攪拌」の場面から、クメールの造形力と宇宙観を読み取れます。
バイヨンを覆う巨大な四面仏顔
アンコール・トム中心のバイヨンでは、54基の塔に巨大な尊顔が四方を向いて並びます。塔が重なる複雑なシルエットと静かな表情が、仏教王都の象徴的な景観をつくります。
地理
遺跡群はカンボジア北西部の平野と森林に広がり、現在の登録地は森林部を含む約400km²の考古公園です。寺院だけでなく、歴代の王都、堀、参道、貯水施設、森林に埋もれた考古遺構が一体となり、東南アジア屈指の広大な遺跡景観を形づくっています。
アンコール・ワットは水濠と長い参道の先に中央祠堂群を置き、アンコール・トム中心部のバイヨンは多数の塔を巨大な尊顔で覆います。ヒンドゥー教と仏教の思想が、都市計画、建築、彫刻を通じて重層的に表現されています。
歴史
クメール人が興したアンコール朝では、9世紀から15世紀にかけて歴代の王が都城と寺院を築きました。アンコール・ワットはヒンドゥー教寺院として造営され、本殿回廊には乳海攪拌をはじめとするヒンドゥー神話が精緻な浮き彫りで描かれました。乳海攪拌とは、不老不死の妙薬を得るため、神々とアスラが大蛇ナーガを綱にして乳海をかき混ぜる天地創造神話です。
後の王都アンコール・トムでは仏教寺院バイヨンが築かれ、54基の塔に巨大な四面仏顔が配されました。1992年に登録基準(i)(ii)(iii)(iv)で世界文化遺産となると同時に危機遺産リストへ記載され、国際的な保存活動を経て2004年に危機遺産リストから外れました。
