概要
イラク北部、チグリス川中流域のカラット・シェルカットにある古代アッシリアの都市遺跡。紀元前3千年紀から発展し、帝国最初の首都、国際交易都市、主神アッシュル神の宗教的中心として栄えた。ジッグラトや宮殿跡、楔形文字資料が残る。
見どころ
アッシュル神殿とジッグラトの遺丘
都市の宗教的核には、主神アッシュルを祀る神殿と聖塔ジッグラトの遺構が残る。未発掘部分を多く含む遺丘から、信仰が王都の成立と持続を支えたことが読み取れる。
チグリス川沿いに残る王都の輪郭
川岸の高まりに宮殿や都市施設の基礎が連なり、天水農業と灌漑農業の境に築かれた交易都市の立地が分かる。浸水の脅威を受ける景観そのものも保全上の焦点である。
地理
アッシュルは北部メソポタミアのチグリス川沿いにあり、天水農業と灌漑農業の境界にあたる独特の地理・生態環境に立地する。現在の地名はカラット・シェルカットで、川を見下ろす遺丘に都市の痕跡が広がる。
遺跡にはアッシュル神殿とジッグラト(聖塔)、宮殿、都市施設の基礎が含まれ、楔形文字を記した粘土板なども出土した。しかし古代都市の多くは現在も未発掘で、地中に残された都市構造そのものが重要な考古学資料である。
歴史
都市の起源は紀元前3千年紀にさかのぼる。紀元前14~9世紀には古代アッシリア帝国の最初の首都として、都市国家と国際交易の拠点を兼ね、主神アッシュルを祀る宗教的首都として発展した。政治の中心が移った後も宗教的重要性は保たれた。
都市はバビロニア人に破壊されたが、1~2世紀のパルティア時代に再興された。長い時代の遺構が重なり、アッシリア文明の宗教、建築、都市計画を伝える一方、大部分は発掘途上にある。
2003年、アッシリア文明を伝える独特な証拠として登録基準(iii)、古代メソポタミアの宗教都市・首都の顕著な見本として(iv)により世界遺産へ登録された。同時に、遺跡付近のダム計画による浸水懸念から危機遺産にも記載された。ダム建設は中断されているが、危機遺産は重大で明確な脅威に対処する制度であり、記載後は保有国が保全計画を作成・実行し、財政的・技術的援助を受けながら、望ましい保全状況と改善措置に照らして継続的に審議される。
