概要
ヨルダン川東岸にあり、洗礼者ヨハネがイエスに洗礼を授けたと伝えられる考古遺跡です。アラビア語のアル・マグタスは「洗礼」を意味します。聖エリヤの丘と川辺の教会群地区に、ローマ・ビザンツ時代の教会、礼拝堂、洗礼用の水場が残り、今も巡礼が続きます。
見どころ
石組みの洗礼用水場と水路
十字形や段状に造られた洗礼用の水場と水路は、川の水と信仰儀礼を結び付けた場所です。石の縁や階段から、身体を水へ導いた儀礼の動線を読み取れます。
聖エリヤの丘から川辺へ続く巡礼地
テル・アル・カッラールの乾いた丘、礼拝堂の基礎、ヨルダン川へ下る道を一続きに見ると、二つの主要エリアが洗礼伝承を共有する一つの聖地だと分かります。
地理
ヨルダン・ハシェミット王国のヨルダン川東岸、乾燥した低地から川辺へ続く場所にあります。遺産は、聖エリヤの丘として知られるテル・アル・カッラールと、ヨルダン川に近い聖ヨハネの教会群地区という二つの主要エリアから構成されます。丘上の居住・礼拝遺構と、川へ向かう巡礼路、教会・礼拝堂・洗礼施設が、洗礼伝承を一つの宗教的景観として結びます。
離れた複数の場所が共通の文化・歴史的背景によって全体の価値を示す構成は、シリアル・サイトの理解に通じます。個々の遺構だけでなく、丘から川へ至る移動と水を使った儀礼の関係が重要です。キリスト教建築では、円形や多角形の中心へ空間を集める集中式が、聖人の記憶を伝える記念堂や洗礼堂に用いられてきました。この遺産では建物の平面だけでなく、洗礼のための水場そのものが信仰の中心です。
歴史
新約聖書の伝承とキリスト教の信仰では、この地が洗礼者ヨハネによるイエスの洗礼と結び付けられてきました。ローマ時代からビザンツ時代にかけて教会群、礼拝堂、洗礼用水場が整えられ、信仰を具体的な建築と水の儀礼へ結びました。遺構が考古学的な証拠を残す一方、巡礼は現在まで続き、過去の聖地が生きた信仰の場でもあることを示します。
文化的伝統を伝える独特な証拠を評価する基準(iii)と、顕著な普遍的価値をもつ信仰・出来事に直接関連する基準(vi)により、2015年に文化遺産として登録されました。基準(vi)は原則として他の基準との併用が望ましく、本遺産でも考古遺跡の証拠と洗礼伝承の結び付きが合わせて評価されています。なお、参照した2級教材は登録基準を(ii)(vi)と記しますが、現行の項目データは(iii)(vi)です。本項目では既存の公式登録データを保持し、教材との記載差を区別しています。
