口承伝説と考古遺跡が重なる3島の聖なる景観

首長ロイ・マタの旧所領

Chief Roi Mata’s Domain

海を渡る物語の道が、住居、洞窟、墓所を一人の首長の記憶で結ぶ。

首長ロイ・マタの旧所領のミニチュア

概要

南太平洋のバヌアツにあるエファテ島、レレパ島、アルトク島にまたがる、17世紀初頭の伝説的首長ロイ・マタの生涯と死に結びつく遺産。住居跡、臨終の地フェルス洞窟、集団埋葬地が、口承伝統と考古学の一致を示す。

  • バヌアツ
  • 文化遺産
  • 2008年登録
  • 検定2級

見どころ

南太平洋の3島を海路で結ぶロイ・マタの住居跡、フェルス洞窟、アルトク島の景観

住居から洞窟、墓所へ続く3島

エファテ島の住居、レレパ島のフェルス洞窟、アルトク島の墓所が海路で連なる。ロイ・マタの生涯と死を、島々を移動する一続きの物語として読み取れる。

フェルス洞窟でロイ・マタの伝説を語り継ぐバヌアツの人々と考古遺跡

口承伝統と考古学の一致

洞窟と集団埋葬地の考古学的証拠が、地域に伝わる首長の物語と重なる。平和的統一、社会改革、紛争解決という理念が、今も人々の記憶と場所に生きている。

地理

中央バヌアツの海域に並ぶエファテ島、レレパ島、アルトク島の3島が、ロイ・マタの生涯をたどる一つの文化的景観をつくる。エファテ島の住居跡から海を渡り、レレパ島のフェルス洞窟、さらにアルトク島の墓所へ至る空間的な連続が特徴である。

島、洞窟、海路、墓所という自然要素は、首長の伝説と儀礼の記憶に切り離せない形で結びつく。物的遺構だけでなく、地域社会が今も語り継ぐ場所の意味まで含めて価値を理解する必要がある。

首長ロイ・マタの旧所領の風景

歴史

ロイ・マタは17世紀初頭、対立していた諸部族を平和的に統一し、社会改革と紛争解決を進めたと伝わる首長である。住居、臨終の洞窟、集団埋葬地の考古学的証拠が口承伝統と重なり、その道徳的価値と改革は今も地域の精神的支柱となっている。2008年、バヌアツ初の世界遺産として登録された。

登録基準(iii)は文化的伝統を伝える独特な証拠、(v)は伝統的な集落・土地利用・海上利用や人と環境の交流、(vi)は顕著な普遍的価値をもつ生きた伝統・思想・信仰などとの直接的関連を評価し、(vi)は他基準との併用が望ましい。3島の景観は、考古遺跡、海上利用、口承伝説が一体となる点で3基準を具体化している。

文化的景観は、1978年の登録開始後に欧州の石造建築へ偏った世界遺産観を見直し、1992年に採択された「自然と人間の共同作品」の概念で、文化遺産と自然遺産の境界に位置する。1993年のトンガリロ国立公園が最初の適用例で、意匠された景観、有機的に進化する景観(残存・継続)、自然と宗教・芸術・文学が結びつく関連する景観に分けられる。ロイ・マタの旧所領は、とりわけ自然の島々と伝説が結びつく関連する景観として理解しやすい。こうした景観の保護には、価値を示す十分な範囲、文化と自然双方への配慮、地域共同体の協力、資産と緩衝地帯の明確化が重要である。

参考

  • UNESCOChief Roi Mata’s Domain
  • 書籍『くわしく学ぶ世界遺産300〈第5版〉』(発行:世界遺産アカデミー/世界遺産検定事務局、発売:マイナビ出版)

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