ブラマンテの修道院建築と、レオナルドが描いた一瞬のドラマ

ミラノのサンタ・マリア・デッレ・グラーツィエ修道院とレオナルド・ダ・ヴィンチの『最後の晩餐』

Church and Dominican Convent of Santa Maria delle Grazie with “The Last Supper” by Leonardo da Vinci

静かな修道院の食堂で、一瞬の驚きが五百年を越えて動き続ける。

ミラノのサンタ・マリア・デッレ・グラーツィエ修道院とレオナルド・ダ・ヴィンチの『最後の晩餐』のミニチュア

概要

ミラノの15世紀のドミニコ会修道院と教会、旧食堂北壁の『最後の晩餐』からなる文化遺産。ゴシック建築にブラマンテのルネサンス様式が重なり、レオナルド・ダ・ヴィンチの実験的な壁画は、人物の感情と遠近法によって絵画史に新時代を開いた。

  • イタリア
  • 文化遺産
  • 1980年登録
  • 検定2級

見どころ

修道院旧食堂の北壁に描かれたレオナルド・ダ・ヴィンチの最後の晩餐

食堂の空間を変えた『最後の晩餐』

キリストの言葉を聞いた12使徒の驚きや動揺を、4群の身振りと表情、食堂空間へ連続する一点透視の構図で描く。レオナルド唯一の壁画作品とされる傑作である。

サンタ・マリア・デッレ・グラーツィエ教会のブラマンテによるクーポラと後陣

ブラマンテが加えたクーポラと後陣

ゴシック様式の教会に、ブラマンテが列柱をめぐらせた円筒形のクーポラと半円形後陣を増築した。中世からルネサンスへの建築の転換を一つの複合施設で見比べられる。

地理

イタリア北部ロンバルディア州ミラノにある、教会・ドミニコ会修道院・旧食堂からなる1.5haの文化遺産である。15世紀半ばに築かれたゴシック様式の複合施設に、ルネサンスの建築家ブラマンテが円柱に囲まれたクーポラ、半円形の後陣、回廊などを加えたため、二つの時代の建築が一体となっている。

修道院旧食堂の北壁には、レオナルド・ダ・ヴィンチが1495~1497年に制作した『最後の晩餐』が残る。キリストを中心に12使徒を3人ずつの4群へまとめ、強い遠近法と光によって「裏切る者がいる」と告げられた直後の反応を一つの空間に表した作品である。壁に直接描かれているが、湿った漆喰へ描く通常のフレスコではなく、乾いた下地にテンペラを用いた実験的技法のため、完成後早くから劣化との闘いが続いた。

ミラノのサンタ・マリア・デッレ・グラーツィエ修道院とレオナルド・ダ・ヴィンチの『最後の晩餐』の風景

歴史

教会と修道院の建設は1463年に始まり、15世紀末にブラマンテが大規模な改修を行った。1495年、ミラノ公ルドヴィーコ・スフォルツァのもとでレオナルド・ダ・ヴィンチに旧食堂の壁画が依頼され、1497年に『最後の晩餐』が完成した。その新しい構図と人物表現は、絵画史に新時代を開き、後世の同主題の表現へ大きな影響を与えた。

1943年の第二次世界大戦中の爆撃で修道院の一部が破壊され、『最後の晩餐』も大きな危機にさらされた。作品は残ったものの損傷と技法由来の劣化が重なり、長期の修復が続けられた。1980年に世界遺産へ登録され、20世紀末の大規模修復では劣化した絵具層を慎重に処置して本来の色彩を回復した。現在も入場人数、空気、光、湿度を管理しながら保存されている。

参考

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