概要
ボリビアの標高4,000mを超えるアンデス高地に築かれた銀鉱山都市。セロ・リコの鉱山、水利・精錬施設、王立造幣局、メスティソ様式の教会が、銀の生産工程と世界経済を動かした植民地時代の産業社会を伝える。
見どころ
世界の銀を支えたセロ・リコ
1545年に世界最大級の銀鉱脈が発見された円錐形の山。人工湖と水路から水力製粉所へ水を送り、鉱石を砕いてアマルガム法で精錬した一連の鉱業システムの起点をなす。
王立造幣局とメスティソ様式の教会
銀を貨幣へ変えた王立造幣局と、先住民の意匠をバロック建築へ融合したサン・ロレンソ教会。鉱業の富が生んだ都市機能と、中央アンデスへ広がったメスティソ様式を伝える。
地理
ボリビア南部、アンデス山中の標高4,000mを超える盆地に広がる高地都市である。市街の南にそびえる円錐形のセロ・リコ(富の山)を中心に、鉱山、22の人工湖、複雑な水路、水力で鉱石を砕いた製粉所、精錬施設、王立造幣局まで、銀の生産工程を支えた産業景観がまとまって残る。
植民都市には王立造幣局、サン・ロレンソ教会、貴族住宅が残り、スペイン人地区と鉱山労働者のバリオス・ミタヨスという社会構造も都市空間に刻まれている。教会建築に見られるメスティソ様式は、スペイン由来のバロック様式へ先住民の文化的要素を取り入れた、中央アンデス独自の表現である。
歴史
1545年、スペイン人が世界最大級の銀鉱脈を発見し、山をセロ・リコと名付けた。鉱山町は急成長し、1580年以降は水力で砕いた鉱石を水銀で処理するアマルガム法が本格化した。17世紀半ばに最盛期を迎えたポトシは、16世紀には世界最大の産業複合体ともみなされ、その銀はスペインへ大量に送られて世界規模の経済変化を引き起こした。
鉱山から王立造幣局までの生産工程と、スペイン人の植民都市、労働者地区が一体で残る点に大きな価値がある。スペイン・バロックと先住民文化を融合したメスティソ様式は中央アンデスの建築と記念芸術へ長く影響した。鉱山開発の世界遺産としては、日本の石見銀山やメキシコのグアナフアトなど、金・銀・銅の採掘遺産との比較研究にも位置付けられる。
1987年に登録基準(ii)(iv)(vi)で世界遺産に登録された。一方、長期の採掘でセロ・リコ内部は多孔質化して不安定となり、不十分な鉱山管理による山体崩壊の危険が深刻化したため、2014年に「危機にさらされている世界遺産リスト」へ記載された。危機遺産制度のもとで保有国には保全計画の作成と実行が求められ、財政的・技術的援助を受けられる一方、顕著な普遍的価値が失われれば世界遺産リストから削除される可能性もある。ポトシは現在も危機遺産であり、保全計画と技術的対策が求められている。
