季節ごとに人が住まいを移す半乾燥地の文化的景観

メイマンドの文化的景観

Cultural Landscape of Maymand

春と秋は山へ、冬は岩の内へ。人が動くことで厳しい土地との均衡が保たれてきた。

メイマンドの文化的景観のミニチュア

概要

イラン中央山脈南端の半乾燥地帯で、季節に応じて人々が住まいを移す自給自足の暮らしが形づくった文化的景観です。春と秋は山上の仮住まいから放牧を行い、冬は渓谷へ下りて軟岩を掘った洞窟住居で生活します。家畜ではなく人が移動する独特な適応の知恵を伝えます。

  • イラン
  • 文化遺産
  • 2015年登録
  • 検定2級

見どころ

軟らかな岩の斜面に入口が並ぶメイマンドの洞窟住居群

岩を掘ってつくった冬の集落

軟岩の斜面に開く多数の入口と奥へ続く住居は、冬の冷え込みを和らげる土地利用の知恵です。自然の地形を壊して置き換えるのではなく、その内部を住空間として生かしています。

半乾燥の山上にある仮住まいと石囲いで放牧される羊や山羊

人が移る春と秋の放牧地

山上の簡素な仮住まいと家畜囲いは、季節に応じて人間が生活拠点を移す独自性を示します。谷の洞窟住居と対で見ると、景観全体が一つの生活システムだと分かります。

地理

イラン中央山脈南端の渓谷と周囲の高地からなり、雨の少ない半乾燥環境にあります。冬の集落は乾燥地特有の軟らかな岩を掘った洞窟住居群で、春と秋には山上に一時的な住居と放牧地が設けられます。谷と高地を季節で使い分ける空間全体が生活の舞台です。

文化的景観は、1992年の第16回世界遺産委員会で作業指針に加えられた「自然と人間の共同作品」に当たる概念で、文化遺産に分類されながら文化と自然の境界に位置します。1993年のトンガリロ国立公園で世界で初めてこの価値が認められました。分類には、人が意図的につくる「意匠された景観」、社会・経済・政治・宗教上の要求から自然に応じて形成される「有機的に進化する景観」、自然と宗教・芸術・文学などが強く結び付く「関連する景観」があります。有機的な景観は、発展が止まった「残存する景観」と、伝統社会の中で現在も発展する「継続する景観」に分かれ、メイマンドは後者の性格を明瞭に示します。

メイマンドの文化的景観の風景

歴史

登録初期には、建造当時の姿を残すヨーロッパの教会や城など石造文化へ登録が偏りました。リストの地域的・文化的な不均衡を正し、世界遺産の信頼性を保つため、自然の制約の中で社会が進化した過程も柔軟に捉える文化的景観の概念が導入されました。道・運河や文化交流のネットワークなど、価値を示す長い線状区域も対象になり得ます。保護には文化と自然の双方、地域共同体の協力、資産とバッファー・ゾーンの明確な範囲設定が必要です。

メイマンドでは、春と秋に村人が山上へ移って仮住まいを設け、放牧を行います。冬には渓谷へ戻り、保温性のある洞窟住居で暮らします。この自給的な循環は、家畜群だけを移すのではなく人間自身が季節の環境に合わせて移動する点に特色があります。伝統的集落・土地利用、または人間と環境の交流の顕著な見本を評価する登録基準(v)により、2015年に文化遺産となりました。

参考

  • UNESCOCultural Landscape of Maymand
  • 書籍『くわしく学ぶ世界遺産300〈第5版〉』(発行:世界遺産アカデミー/世界遺産検定事務局、発売:マイナビ出版)

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