概要
ヨーロッパ8ヵ国を流れたドナウ川がルーマニア南東部で黒海へ注ぎ、約1万1,000年をかけて築いた広大な三角州です。ヨーロッパ最大の湿地帯であり、湖沼・水路・葦原には45種の淡水魚と約300種の鳥類が生息します。とりわけモモイロペリカンとハイイロペリカンの重要な繁殖地です。
見どころ
二種のペリカンが集う繁殖地
葦に囲まれた低い島にはモモイロペリカンの群れが営巣し、ハイイロペリカンも姿を見せます。約300種の鳥類を支える湿地の豊かさを、最も象徴的に感じられる場所です。
黒海へほどける分流と湖沼
上空から見ると、ドナウ川の流れが葦原を縫って枝分かれし、無数の湖や砂州を結んで黒海へ至ります。1万1,000年の堆積がつくった巨大な湿地の仕組みを一望できます。
地理
ルーマニア南東部ドブロジャ地方のトゥルチャ県にあり、ドナウ川が幾筋もの分流となって黒海へ達する河口域に広がります。上流8ヵ国から運ばれた土砂が約1万1,000年にわたり堆積し、水路、浅い湖、砂州、湿性草原、広大な葦原をもつ三角州を形成しました。ヨーロッパ最大で、最もよく原生的な姿を残すデルタの一つです。
水と陸が細かく入り組む環境には45種の淡水魚と約300種の鳥類が確認され、多数の渡り鳥が採餌・繁殖に利用します。葦原や島状の砂州は、モモイロペリカンとハイイロペリカンの大規模な繁殖地として特に重要です。広大な水面、葦原、鳥の群れがつくる景観美が登録基準(vii)、生物多様性保全上の重要性が(x)に対応します。
歴史
ドナウ川が黒海沿岸へ運ぶ土砂は、最終氷期後の約1万1,000年前から現在まで三角州を成長させてきました。流路の移動、土砂の堆積、湖沼の生成と植生の定着が今も続き、湿地生態系そのものが変化しながら維持されています。
手つかずの自然が広く残る野生生物の宝庫として、1991年に自然遺産へ登録されました。保全では個々の鳥や魚だけでなく、上流からの水と土砂、分流、湖沼、葦原が結び付くデルタ全体の働きを守ることが重要です。
