概要
イギリス中部のダーウェント川沿いに、18〜19世紀の綿紡績工場と労働者住宅、地域施設が一体で残る産業遺産。リチャード・アークライトの水力紡績機を世界で初めて工場へ導入し、近代的な工場制機械工業と工業都市のモデルを各地へ広めた。
見どころ
クロムフォード・ミルの水力紡績
アークライトの水力紡績機を世界で初めて導入した工場。長い煉瓦造の建物、ダーウェント川から水を引く水路と水車を一緒に見ると、動力と大量生産の仕組みが分かる。
工場とともに生まれた労働者の町
工場の周囲に並ぶ住宅、学校、教会などは、生産の場と暮らしを計画的に結んだ証し。後世の工業都市へ受け継がれた社会と都市計画のモデルを歩いて理解できる。
地理
イギリス中部、ダービーシャーを流れるダーウェント川沿いの峡谷に位置する。川の安定した水力を動力として利用できる場所に、18〜19世紀の紡績工場、水路、堰、労働者住宅、学校や教会などの施設が連続する。
工場群だけでなく、そこで働く人々の生活を支えた町まで保存されている点が重要である。水力を利用する工場が渓谷の地形に沿って建ち、その周囲に計画的な住宅と公共施設が置かれた空間構成は、後の工業都市のモデルとなった。富岡製糸場が製糸業を中心とするのに対し、比較対象となるダーウェント峡谷は紡績業を中心に発展した。
歴史
18世紀、発明家リチャード・アークライトが開発した水力紡績機が、ダーウェント峡谷の工場に世界で初めて導入された。1771年に建設が始まったクロムフォード・ミルは、水力で多数の機械を一斉に動かし、労働者を一つの場所に集めて生産する工場制機械工業の先駆けとなった。
成功した仕組みは川沿いの各地へ広がり、18〜19世紀に大規模な工場群と計画的な労働者集落を生んだ。生産技術だけでなく、工場、住居、施設を組み合わせた都市計画が産業革命期の社会を形づくった。
2001年、登録基準(ii)(iv)で世界遺産に登録された。(ii)は建築・技術・都市計画などの発展における重要な価値観の交流を示す基準で、水力紡績と工場システムの世界的波及に対応する。(iv)は人類史の代表的段階を示す建築様式・技術の総合体・景観の顕著な見本を評価し、ここでは初期工業都市の工場・水路・住宅が一体で残る点に表れている。
