概要
フロリダ半島南端に広がる全米最大の湿原地域で、「草の川」と呼ばれる緩やかな水の流れが多様な湿地生態系をつくる。ハンモック、マングローブ、浅い湾が固有種やワニ、マナティー、多数の鳥類を支える一方、水位低下と水質汚染により2010年から再び危機遺産となっている。
見どころ
水面に浮かぶ森、ハンモック
湿原の水面より数cmだけ高い島に、マホガニーなどの常緑高木と熱帯植物が密生する。わずかな高低差が、草原の中に異なる生態系をつくり出す。
マングローブが支える海辺の命
淡水と海水が交わる下流域には広大なマングローブが根を張る。複雑な根の間は魚の育成場となり、ワニや水鳥、マナティーを含む多様な動物を支える。
地理
アメリカ合衆国フロリダ半島の南端、メキシコ湾沿岸に広がる世界遺産で、登録範囲は約56万7,017haである。北米最大の亜熱帯原生地域であり、平坦な地形を淡水が内陸から海へごくゆっくり流れるため、「草の川」と形容される。淡水と汽水、温帯と亜熱帯、浅い湾と沿岸海域が接することで、湿原、草原、森林、海岸がつながる複雑な水環境が形成される。
上流部には、水面より数cm高い大小の島であるハンモックが点在し、マホガニーなどの常緑高木や熱帯植物が茂る。下流の海岸には西半球最大級のマングローブ生態系が広がり、ワニや鳥類の重要な生息地となる。マングローブとは、熱帯・亜熱帯の海水が入る河口付近に生育する常緑の低木・高木群である。
公園では、固有種を含む植物1,000種以上、動物800種以上、鳥類400種以上が確認され、北米有数の水鳥繁殖地でもある。ワニや多数の鳥類に加え、絶滅が懸念されるマナティーなども生息する。
歴史
1930年代以降、周辺都市の拡大により湿原が生活用水の供給地として利用され、排水・治水事業も重なって地下水位が低下し、水質汚染が進んだ。水の流れが変わると湿地全体の食物網が崩れ、魚類が80%、鳥類が90%減少したとされるほど深刻な影響が生じた。
1979年、地質と水環境、生態系の進行過程、生物多様性が評価され、登録基準(viii)(ix)(x)で世界自然遺産に登録された。1993年に危機遺産リストへ記載された後、湿原回復措置が進められ、2007年に一度リストを脱した。しかし水質汚濁と水位低下による生態系の悪化が続き、2010年に再び危機遺産となった。
危機遺産制度は、顕著な普遍的価値に重大かつ明確な危険がある遺産を国際的に共有し、保有国へ保全計画の実施を求める仕組みである。エヴァーグレーズでは上流域からの水量と水質を回復させることが、湿原全体を立て直す中心課題となっている。
