塩の生産を、ルドゥーが理想工業都市へと設計した

サラン・レ・バン大製塩所からアルケ・スナン王立製塩所までの天日塩生産所

From the Great Saltworks of Salins-les-Bains to the Royal Saltworks of Arc-et-Senans, the Production of Open-pan Salt

白い塩の結晶の背後に、18世紀の建築家が夢見た合理的な工業都市が浮かび上がる。

サラン・レ・バン大製塩所からアルケ・スナン王立製塩所までの天日塩生産所のミニチュア

概要

中世以前にさかのぼるサラン・レ・バンの製塩技術と、クロード・ニコラ・ルドゥーが設計したアルケ・スナン王立製塩所を結ぶ産業遺産。半円形の建築配置に、効率的な労働組織と理想工業都市への構想が表れている。

  • フランス
  • 文化遺産
  • 1982年登録
  • 検定2級

見どころ

夕日に照らされたアルケ・スナン王立製塩所の監督官邸と列柱

ルドゥーの理想を凝縮した監督官邸

王立製塩所の中心に立つ監督官邸。特徴的な列柱玄関を核に建物群が半円形に並び、ルドゥーが追求した効率的な労働組織と理想都市の構想を視覚化する。

サラン・レ・バン大製塩所の地下石造回廊と木製揚水機構

地下の塩水を運んだサラン・レ・バン

サラン・レ・バンでは、地下から塩水をくみ上げ、導き、煮詰めて塩を得た。石造の地下空間と木製機構は、中世以前から続いた内陸製塩の技術を実感させる。

地理

遺産はフランス東部のジュラ山地周辺にある二つの製塩拠点からなる。サラン・レ・バン大製塩所は塩分を含む地下水を利用してきた古い生産地で、その歴史は中世以前にさかのぼる。地下の石造空間、塩水をくみ上げる設備、導水・煮詰めの工程が、内陸で塩を生産した長い技術史を伝える。

そこから離れた平地に築かれたアルケ・スナン王立製塩所は、塩水と燃料、労働力を合理的に結びつけようとした計画施設である。監督官邸を中心に生産棟や労働者の施設を弧状に並べ、円形都市を志向しながら半円形の段階で未完成となった。二つの施設を通じて、地下資源の採取から大釜での製塩、さらに建築と労働組織の設計までを読み取れる。

サラン・レ・バン大製塩所からアルケ・スナン王立製塩所までの天日塩生産所の風景

歴史

サラン・レ・バンでは中世以前から塩水を利用した製塩が続き、地下水の採取、導水、煮詰めという技術が長期にわたって蓄積された。本格的な製塩施設の建設には、のちにアルケ・スナンを設計する建築家クロード・ニコラ・ルドゥーも関わったとされ、歴史の古い生産拠点と啓蒙時代の計画施設を結びつける。

ルイ16世治世下の1775年、ルドゥーの設計でアルケ・スナン王立製塩所の建設が始まった。建物を円形に配置して監督、製造、労働者生活の動線を組織し、生産効率を高めると同時に、建築によって社会秩序を表そうとした。全円は実現せず半円形のまま未完成となったが、理想的工業都市を具現化しようとした大規模な試みとして建築史上重要である。

1982年にはアルケ・スナン王立製塩所が世界遺産となり、2009年の範囲拡大でサラン・レ・バン大製塩所が加わった。これにより、塩の生産技術の長い発展と、18世紀の合理主義的な工業都市計画を一つの遺産として示す現在の範囲になった。

参考

公開日: 最終更新: