概要
ニュー・サウス・ウェールズ州とクイーンズランド州に広がる雨林群。大分水嶺や火山性山地に、ゴンドワナ大陸の動植物相を伝えるナンキョクブナなどが残り、地球史、生態系の進化、希少種の保全を一体で示す。
見どころ
ゴンドワナの系譜を残すナンキョクブナ
ナンキョクブナの古木とシダが重なる森は、ゴンドワナ大陸に栄えた植物相の系譜を伝える。根や幹を覆う苔が、降水量の多い山地環境を物語る。
雨林に守られる希少な哺乳類
林床で暮らす小型のパルマヤブワラビーをはじめ、隔離された雨林には希少な哺乳類が生息する。登録は森林伐採を抑え、生息地保全を進める力となった。
地理
オーストラリア東岸、ニュー・サウス・ウェールズ州とクイーンズランド州にまたがる複数の国立公園・保護区からなる雨林群である。火山活動で生まれた山岳や火口周辺、海岸近くの急斜面、大分水嶺に沿って広がり、豊富な降水が約3,700km²に及ぶ世界最大級の多雨林帯を育んだ。大分水嶺や急崖、盾状火山の火口地形は、ゴンドワナ大陸の活動とオーストラリア東岸の地形形成史を伝える。
森にはナンキョクブナなどゴンドワナ大陸を代表する被子植物が茂り、古い植物群から現在の雨林へ至る進化の過程を観察できる。コアラ、カンガルー、パルマヤブワラビーなどの希少な哺乳類を含め、絶滅の危機にある雨林生物の重要な生息地でもある。バリントン・トップス国立公園では、絶滅したと思われていたクチニセマウスが再発見された。
歴史
かつて南半球には巨大なゴンドワナ大陸があり、その分裂によって南アメリカ、アフリカ、オーストラリア、南極、インドなどが生まれたと考えられている。この雨林群は、分裂以前から続く動植物相と、その後の隔離・進化の過程を伝えるため、地球史・生態系・生物多様性の三つの観点から評価されている。
ヨーロッパ人の入植後に森林伐採が進み、もとの森林面積の約4分の3が失われた。環境保全を目的として1986年に世界遺産へ登録され、1994年の範囲拡大時に「オーストラリアの中東部の多雨林」となった。世界遺産登録は伐採への抑止力となり、鳥類や希少動物の観察機会も回復したとされる。2007年に現在の「オーストラリアのゴンドワナ雨林」へ名称が変更された。
