イスラムとロシア正教が、白い城壁の内側で重なるタタールの城塞

カザン・クレムリンの歴史的関連建造物群

Historic and Architectural Complex of the Kazan Kremlin

モスクの尖塔、聖堂の丸屋根、煉瓦の塔が並ぶ景観に、征服と共存の歴史が刻まれている。

カザン・クレムリンの歴史的関連建造物群のミニチュア

概要

ロシア連邦タタールスタン共和国の首都カザンにある城塞。10世紀ごろのヴォルガ・ボルガル人の拠点を起源とし、ジョチ・ウルス、カザン・ハン国、ロシア支配の歴史を通じて、イスラム建築とロシア正教建築が共存する文化的複合体となった。

  • ロシア
  • 文化遺産
  • 2000年登録
  • 検定2級

見どころ

カザン・クレムリン内に並ぶクル・シャリフ・モスクとブラゴヴェシェンスキー大聖堂

クル・シャリフ・モスクと正教聖堂の共存

4本のミナレットをもつ再建モスクと、青い丸屋根のブラゴヴェシェンスキー大聖堂が城壁内に並ぶ。イスラムとロシア正教が重なるこの遺産の核心を体感できる。

カザン・クレムリンの白い城壁越しにそびえる赤煉瓦のシュユンベキ塔

シュユンベキ塔と白い城壁

クレムリン最高の6層58mの煉瓦塔。イタリア建築の影響も指摘される端正な姿を、白い城壁や歴史的公邸との対比で見ると文化交流の層が分かる。

地理

ロシア連邦西部、沿ヴォルガ連邦区えんヴォルガれんぽうくに属するタタールスタン共和国の首都カザンに位置する。白い城壁に囲まれた高台には、イスラムを象徴するクル・シャリフ・モスクとロシア正教のブラゴヴェシェンスキー大聖堂、公邸、行政・軍事施設が集まり、二つの文化の影響を一望できる。

ロシアに現存する唯一のタタール系城塞であり、10〜16世紀の古い遺構を取り込みながら、主に16〜19世紀の建造物群がまとまって残る。

カザン・クレムリンの歴史的関連建造物群の風景

歴史

10世紀ごろ、ヴォルガ・ボルガル人が城塞を築き、交易都市として繁栄した。13世紀のモンゴル侵攻後はタタール人によるジョチ・ウルス(キプチャク・ハン国)、続いてカザンを首都とするカザン・ハン国が支配し、この時代はタタールのくびきとも呼ばれる。城塞にはクル・シャリフ・モスクをはじめとするイスラム建築が築かれた。

1552年にイワン雷帝がカザンを征服するとモスクは破壊され、ロシア正教化が進んだ。16世紀以降はヴォルガ地方の司教座が置かれ、正教建築、公邸、行政・軍事施設を備えるクレムリンへ発展した。1562年完成の砂岩造ブラゴヴェシェンスキー大聖堂は現存最古の建物とされ、6層・高さ58mのシュユンベキ塔にはイタリア建築の影響も指摘される。

2000年に登録基準(ii)(iii)(iv)で登録された。(ii)の価値観の交流はイスラムと正教・外来建築の融合、(iii)の文明を伝える独特な証拠はタタール城塞の歴史、(iv)の人類史の代表的段階を示す建築群は16〜19世紀の城塞都市の構成に表れている。初代大統領ミンチメル・シャイミーエフの主導で、クル・シャリフ・モスクは2005年に再建された。4本のミナレットをもつヨーロッパ最大規模のモスクとして、タタール時代の記憶を現代に蘇らせている。

参考

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