概要
7世紀の軍事拠点を起点に、ファーティマ朝が969年に築いたアル=カーヒラを核として発展したイスラム都市。アズハル・モスク、イブン・トゥールーン・モスク、マドラサ、ハンマーム、城壁門などが重なり、マムルーク朝期には世界最大級のイスラム都市、「1,000のミナレットが立つ街」と称された。
見どころ
学問の中心となったアズハル・モスク
972年に建てられたファーティマ朝を代表するモスク。列柱の礼拝空間と白い中庭、時代ごとに加わったミナレットが、千年以上続く宗教・学術都市の歩みを示す。
イブン・トゥールーン・モスクのらせん状ミナレット
9世紀の広大な中庭式モスク。整然と連なる尖頭アーチと、外側に階段が巻き付くらせん状のミナレットが、初期イスラム都市アル=カターイの面影を伝える。
地理
ナイル川東岸、近代カイロの都市圏に包まれた約523.66haの歴史地区である。フスタート、アル=アスカール、アル=カターイ、ファーティマ朝のアル=カーヒラという歴代の都市が連続し、城壁、門、細街路、市場、住宅、宗教施設が複雑な中世都市の骨格をつくる。ヨーロッパ・アジア・アフリカを結ぶ交易路と巡礼路の結節点だったため、政治・経済・学術・芸術の国際的中心となった。
街を特徴づけるモスクはメッカ方向のキブラを基準とし、礼拝方向を示すミフラーブ、説教壇ミンバル、礼拝を呼びかけるミナレットを備える。偶像や祭壇を置かず、アラベスク、幾何学文様、文字装飾で空間を彩るイスラム寺院建築の特色を、各王朝の建築群から比較できる。
歴史
カイロの起源は、641年頃にイスラム勢力がアフリカ進出の拠点としてナイル東岸に築いた軍事都市フスタートにさかのぼり、同年にはこの街で最初のモスクが建てられた。9世紀にはアル=カターイにイブン・トゥールーン・モスクが建設された。
10世紀半ばにファーティマ朝がエジプトを支配し、969年、4代目カリフの時代に「勝利者の軍事都市」を意味するミスル・アル=カーヒラが築かれた。カーヒラの英語読みに由来する「カイロ」が現在の都市名となる。972年に建てられたアズハル・モスクは学問の中心として発展し、ファーティマ朝の政治・宗教・文化を象徴した。
12世紀のアイユーブ朝を経て、13~16世紀のマムルーク朝期に都市は最盛期を迎え、14世紀には「1,000のミナレットが立つ街」と称された。1979年に世界遺産へ登録されたが、現代では人口集中、交通、地下水位上昇、弱い地盤、保護体制の不足などが歴史的建造物を脅かしている。
