概要
イタリア北西部ピエモンテ州のイヴレーアは、タイプライター、機械式計算機、オフィス・コンピューターで知られたオリベッティ社の企業都市です。1930年代から1960年代を中心に、工場だけでなく行政・社会サービス施設や住宅まで近代建築として計画され、工業製品と建築の新しい関係を示しました。
見どころ
光を取り込む合理主義の工場建築
連続するガラス面、反復する構造フレーム、鋸屋根を追うと、採光や作業効率をそのまま外観へ表した設計が分かります。工業生産の機能が近代建築の造形になった見どころです。
工場と住まいをつなぐ企業都市
住宅、社会サービス施設、緑道の向こうに工場が見える場所では、生産だけでなく生活環境まで設計した都市理念を一望できます。産業遺産を工場だけで捉えないことが重要です。
地理
イタリア北西部のピエモンテ州に位置し、既存の都市の中へオリベッティ社の生産・経営・福祉・居住機能が組み込まれています。長大な工場棟、管理部門の建築、社会サービス施設、労働者の住居が相互に近接し、単独の工場ではなく、産業活動を支える都市環境全体として価値を読み取れる点が特徴です。
世界遺産の文化遺産は登録基準(i)〜(vi)のいずれかが認められた資産です。イヴレーアでは、人類史の代表的な段階を示す建築・技術・景観の顕著な見本を対象とする基準(iv)が、20世紀の工業化と近代化を都市規模で表す構成に対応しています。
歴史
オリベッティ社はタイプライターから機械式計算機、さらにオフィス・コンピューターへと事業を広げ、イヴレーアを世界的に知られる企業都市へ成長させました。1930年代から1960年代にかけ、イタリアを代表する都市計画家と建築家が巨大な工場、行政施設、社会サービス施設、住宅を設計しました。機械を生産する建築だけでなく、そこで働く人の生活を支える施設まで一つの都市理念で結んだことが、工業製品と建築の現代的な関係を示しています。
1994年のグローバル・ストラテジーは、宮殿や宗教建築などに偏った世界遺産リストの不均衡を改めるため、産業遺産や先史時代・現代に近い遺産の登録強化を掲げました。また、TICCIHが2003年に採択したニジニー・タギル憲章は、産業遺産を工場・機械・鉱山・交通インフラだけでなく、住宅や宗教・教育施設まで含むものと定義しています。工場と社会施設、住居を一体で評価するイヴレーアは、こうした広い産業遺産観を具体的に示します。
2018年に登録基準(iv)の文化遺産として登録され、2021年に登録範囲が変更されました。
