概要
イギリス北西部の田園地帯にあるジョドレルバンク天文台は、マンチェスター大学が所有する電波天文学の研究拠点です。天文物理学者バーナード・ラヴェルが設置した直径76mのラヴェル望遠鏡は、当初マーク1望遠鏡と呼ばれ、完成時には世界最大でした。現在も世界第3位の大きさをもち、英国7基の望遠鏡を結ぶe-MERLINの中核です。電波天文学の技術革新とビッグ・サイエンスの発展を示す遺産として、2019年に登録基準(i)(ii)(iv)(vi)で登録されました。
見どころ
直径76mのラヴェル望遠鏡
巨大な皿を支える白い格子構造と、皿全体を向け直す可動機構は圧巻です。当初マーク1と呼ばれ世界最大だった装置を見上げると、電波天文学を切り開いた工学的創造性とスケールを実感できます。
観測装置と研究施設がつくる科学の景観
ラヴェル望遠鏡だけでなく、ほかの電波望遠鏡、制御棟、研究施設を一緒に見ると、現代天文学が一台の機械では成立しないことが分かります。英国7基を結ぶe-MERLINの中核という役割も重要です。
地理
天文台はイギリス北西部の開けた田園地帯に位置します。都市から離れた環境は、観測を乱す電波の影響を受けにくいという利点があり、巨大な電波望遠鏡を運用する研究景観が形成されました。直径76mのラヴェル望遠鏡を中心に、観測・制御・研究の施設がまとまり、さらに英国各地の望遠鏡へつながります。
ジョドレルバンクは自然遺産ではなく、科学技術の発展を示す文化遺産です。文化遺産は登録基準(i)~(vi)の一つ以上が認められる記念物、建造物群、遺跡、文化的景観などを含みます。ここでは巨大な観測装置だけでなく、電波を避ける立地、制御施設、研究組織、遠隔の望遠鏡を結ぶネットワークが、現代科学の複合的な仕組みを形づくっています。
歴史
天文物理学者バーナード・ラヴェルは、電波の影響が少ない田園地帯に巨大な可動式電波望遠鏡を設置しました。当初マーク1望遠鏡と呼ばれたラヴェル望遠鏡は直径76mで、完成時には世界最大、現在でも世界第3位の規模を誇ります。天体が発する電波を観測し、宇宙への理解を急速に前進させる研究を支えました。
現在は英国国内の7基の望遠鏡を結び、一つの電波望遠鏡として働かせるe-MERLINの中核です。巨大装置、複数分野の専門家、広域ネットワークを組み合わせるビッグ・サイエンスの発展を体現し、電波天文学の技術革新を継続しています。
登録基準(i)は人類の創造的資質を示す傑作、(ii)は建築・技術などの発展における重要な価値観の交流、(iv)は人類史の重要段階を示す科学技術の集合体や景観、(vi)は顕著な普遍的価値をもつ出来事・思想などとの直接的関連を評価します。基準(vi)は他の基準と合わせて用いることが望ましく、ジョドレルバンクでも三つの基準と併用されています。
1994年のグローバル・ストラテジーは、世界遺産リストの偏りを正すため、先史時代だけでなく現代建築や近現代の科学技術遺産にも目を向けました。ジョドレルバンクの保護では、望遠鏡の形や材料だけでなく、観測・制御という用途、技術技能、研究施設の配置、電波の少ない周辺環境を一体として守ることが真正性と完全性につながります。
