クラドルバー種と宮廷馬車文化のために設計された牧場景観

クラドルビ・ナド・ラベムにある式典馬車用の馬の繁殖・訓練地の景観

Landscape for Breeding and Training of Ceremonial Carriage Horses at Kladruby nad Labem

白い馬車馬が並木道を進み、その両側に水路と牧草地が伸びます。馬を育て、訓練し、美しく見せる目的が、建物だけでなくエルベ川氾濫原の景観全体を形づくりました。

クラドルビ・ナド・ラベムにある式典馬車用の馬の繁殖・訓練地の景観のミニチュア

概要

チェコのエルベ川氾濫原にあるクラドルビ・ナド・ラベムは、ハプスブルク家の式典馬車を引くクラドルバー種の繁殖と訓練に特化した国営種馬牧場の景観です。1579年に皇帝ルドルフ2世が宮廷馬飼育場に指定して以来、中央路、水路、並木、左右対称の構成をもつフランス式の設計と、周囲の田園に溶け込むイギリス式の景観理念が組み合わされました。2019年に登録基準(iv)(v)で世界文化遺産となり、2021年に登録範囲が変更されました。

  • チェコ
  • 文化遺産
  • 2019年登録
  • 検定2級

見どころ

並木道で黒い式典馬車を引く2頭の白いクラドルバー種

白いクラドルバー種と式典馬車

均整の取れた白馬が式典馬車を引く姿は、この遺産の目的を一目で示します。馬の体格や歩調だけでなく、長期の繁殖、訓練、装具、運転技術が一体となって宮廷馬車文化を支えてきた点に注目です。

種馬牧場へ伸びる直線道路と水路と左右対称の並木・牧区

直線の秩序から田園へ溶ける景観

中央路、水路、並木、牧区がつくる左右対称の軸線を見渡すと、フランス式の明快な設計が分かります。その先で樹林や牧草地へ柔らかく移る様子から、イギリス式の田園景観との調和も読み取れます。

地理

遺産はエルベ川の氾濫原に広がり、平坦で水に恵まれた土地を馬の繁殖・飼育・訓練に利用しています。種馬牧場を中心に、まっすぐな中央路、直線的な水路、並木道、左右対称の牧区が秩序だった骨格をつくり、その外側では樹林や広い牧草地が自然な田園風景へ移行します。

この景観は、人間が意図的に設計した意匠された景観の性格をもちます。同時に、社会的・経済的な目的から自然環境に応じて形成され、馬の繁殖と訓練という機能を現在へ伝える有機的・継続的な側面も読み取れます。文化的景観は1992年に世界遺産制度へ導入された「自然と人間の共同作品」の考え方で、自然遺産ではなく文化遺産に分類されます。

クラドルビ・ナド・ラベムにある式典馬車用の馬の繁殖・訓練地の景観の風景

歴史

1579年、神聖ローマ皇帝ルドルフ2世はクラドルビの牧場を宮廷馬飼育場に指定しました。以来、ハプスブルク家の公式行事で用いる式典馬車を引くクラドルバー種の繁殖と訓練が、土地利用と景観設計の中心になりました。馬そのものだけでなく、飼育、調教、移動、観覧に適した道、水路、牧区、建物を一体として整えたことに特徴があります。

登録基準(iv)は、人類史の重要な段階を示す建築・技術の集合体や景観の優れた見本、(v)は文化を代表する伝統的な集落・土地利用、または人間と環境の交流の顕著な例を評価します。この遺産は、式典馬車文化のためにつくられた繁殖・訓練施設と景観設計の総体、そして氾濫原を長期にわたり馬産へ適応させてきた土地利用によって二つの基準を満たしました。

文化的景観の保護では、建物や並木だけを個別に残すのではなく、道路、水路、牧区、樹林、田園の関係と、馬を繁殖・訓練する動的な機能を維持する必要があります。真正性は形状・意匠、材料、用途・機能、伝統技能、管理体制、所在地と周辺環境などから評価されます。完全性の観点では、価値を示す構成要素を十分な範囲で含み、景観の関係性を損なう開発を抑えることが重要です。

参考

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