氷河地形とトナカイの移牧が共存する北極圏ラップランドの複合遺産

サーメ人地域

Laponian Area

氷河が磨いた山と湖の間をトナカイの群れが季節とともに移り、五千年の暮らしを今へつなぐ。

サーメ人地域のミニチュア

概要

スウェーデン北部、北極圏のラップランドに広がる複合遺産である。英語名をラポニアン・エリアといい、最終氷期まで大地を覆った氷河が刻んだ山岳・湖沼景観と、約5,000年前からこの地で暮らすサーメ人の文化が一体で評価されている。現在は定住する人も多い一方、トナカイの放牧を軸に季節移動する伝統的な移牧生活も受け継がれている。

  • スウェーデン
  • 複合遺産
  • 1996年登録
  • 検定2級

見どころ

ラップランドの氷河地形がつくる山岳と湖沼の景観

氷河が刻んだ北極圏の山と湖

最終氷期まで大地を覆った氷が、谷や山稜、湖沼の輪郭を削り出した。広大な視界の中で氷河地形と現在の水系・ツンドラを重ねて見ると、登録基準(vii)(viii)(ix)の自然価値が実感できる。

スウェーデン北部でトナカイの群れが移動するサーメ人の文化的景観

トナカイと移動するサーメ人の文化

季節に応じてトナカイの群れを山地と森林の間へ導く移牧は、約5,000年にわたる自然への適応を伝える。自然保護区ではなく、人の営みが今も続く複合遺産として見ることが大切である。

地理

スウェーデン北部の北極圏に位置し、ラップランドの山々、氷河が刻んだ谷、湖、河川、森林、ツンドラが広がる。最終氷期まで厚い氷に覆われていたため、氷河の浸食と堆積の痕跡が明瞭で、雄大かつ独特な景観美を生み出した。地形の形成過程が現在の水系や植生にも反映されている。

人口密度が低く、大規模な自然環境がまとまって残るため、希少な野生動物の生息地となっている。同時に、この景観は人の手がまったく入っていない原生自然ではない。サーメ人がトナカイの群れを季節ごとに移動させ、山地、森林、湿地を使い分けてきた生きた文化的景観でもある。

サーメ人地域の風景

歴史

最終氷期まで氷に覆われた大地では、氷河の浸食によって谷や山地の輪郭が形づくられた。その後、この地域ではサーメ人が約5,000年前から生活を営み、狩猟や採集、トナカイの放牧を通じて北極圏の自然に適応してきた。

現代には定住するサーメ人も多くなったが、今もトナカイを中心とする伝統的な移牧を続ける人々がいる。家畜の季節移動と自然環境の利用を受け継ぐ営みは、自然と文化を切り離せないこの遺産の核心である。1996年、登録基準(iii)(v)(vii)(viii)(ix)によりスウェーデンの複合遺産として登録された。

参考

  • UNESCOLaponian Area
  • 書籍『くわしく学ぶ世界遺産300〈第5版〉』(発行:世界遺産アカデミー/世界遺産検定事務局、発売:マイナビ出版)

公開日: 最終更新: