概要
ロシアの北極圏に位置するウランゲリ島、ヘラルド島と周辺海域からなる自然遺産。最終氷期にも大規模な氷床に覆われなかったため独自の生態系が保たれ、23種の固有植物、世界最高密度とされるホッキョクグマ、約100種の希少な渡り鳥、回遊するコククジラを支えている。
見どころ
ホッキョクグマが集うツンドラと海氷
世界で最も高密度とされるホッキョクグマの生息地。氷河期にも凍結を免れた低い山地とツンドラ、海氷が一続きになり、親子グマが巣穴と沿岸を行き来する北極の生態系を見渡せる。
コククジラと渡り鳥を養う海
短い夏、周辺海域はエル・ビスカイノから回遊してきたコククジラの餌場となり、絶滅危惧種を含む約100種の渡り鳥も飛来する。陸と海を結ぶ季節の生命循環が見どころ。
地理
ロシア極東の北極海に浮かぶウランゲリ島とヘラルド島、そして両島を取り巻く海域で構成される。海と陸が密接につながる保護区で、ツンドラ、岩山、海岸、海氷域が季節ごとに異なる生息環境をつくる。
北極圏にありながら氷河期に全面凍結を免れた地域で、ほかの北極圏の土地では失われた生物相が残った。隔離と厳しい環境への適応によって23種の固有植物が確認され、現在も北極圏の生態系が進化・発展する過程を観察できる。
歴史
氷河期に大規模な氷床の外側に残ったことが、この遺産の自然史を決定づけた。長く孤立した陸地は植物の避難地となり、海氷と沿岸海域は海生哺乳類や鳥類の季節移動を支える舞台になった。
ホッキョクグマの生息密度は世界で最も高いとされ、絶滅の危機に瀕する約100種の渡り鳥が繁殖・休息のために訪れる。周辺海域はメキシコのエル・ビスカイノ鯨保護区から回遊するコククジラの重要な餌場でもある。
2004年、登録基準(ix)(x)で世界遺産に登録された。(ix)は陸上・淡水・沿岸・海洋の生態系や動植物群集の進化・発展における現在進行中の生態学的・生物学的過程、(x)は絶滅危惧種を含む生物多様性保全上最重要かつ代表的な自然生息域を評価する基準である。氷河期から続く独自の進化過程と、北極圏の多様な生物を支える生息域の両方が価値の核となる。
