乳香交易とアドベの高層住宅が築いた、世界最古級の摩天楼都市

サナアの旧市街

Old City of Sana'a

白い幾何学模様をまとった土の摩天楼と迷路の市場に、乳香交易で栄えた中世アラビア都市の日常が息づく。

サナアの旧市街のミニチュア

概要

イエメン西部高原に2,500年以上続く城壁都市。乳香交易で栄え、6,000棟以上のアドベ造高層住宅、100以上のモスク、迷路状のスークが中世アラビア都市の姿を伝える。内戦被害により2015年から危機遺産である。

  • イエメン
  • 文化遺産
  • 1986年登録
  • 検定2級

見どころ

白い石膏装飾が施されたサナア旧市街の伝統高層住宅群

アドベで築いた6,000棟の摩天楼

花こう岩・玄武岩の基壇にアドベを積み、白い石膏模様を施した5~9階建ての塔状住宅群。鉄筋なしで高さ最大50mに達する建築は、世界最古級の摩天楼都市の景観を形づくる。

イエメン門の奥に広がるサナア旧市街のスーク

イエメン門から始まる40区域のスーク

城壁のイエメン門をくぐると、塩の市場スーク・アル・ミルフを中心に40区域の市場が迷路状に広がる。香辛料や金銀細工を扱う何千もの店が、交易都市の活気を受け継ぐ。

地理

イエメン西部、標高約2,200mの高原盆地に位置する首都サナアの旧市街である。東西約1.5km、南北約1kmの楕円形をした城壁都市には、7世紀にムハンマドが創建したとされる大モスクを含む100以上のモスク、64のミナレット、14のハンマーム、迷路状のスークが集中する。UNESCOの記録では、103のモスクと6,000棟を超える住宅などが11世紀以前に築かれた都市構成を伝える。

街を最も特徴づけるのは約6,000棟の高層住宅で、多くは5~6階建て、なかには9階建てで高さ50mに達するものもある。鉄筋を使わず、花こう岩や玄武岩の土台にアドベと呼ばれる日干しレンガを積み、白い石膏で窓や外壁を幾何学的に飾る。城壁のイエメン門を入ると、スーク・アル・ミルフ(塩の市場)を中心に40区域の市場が広がる。

サナアの旧市街の風景

歴史

サナアには2,500年以上にわたる居住の歴史があり、世界最古の都市の一つとされる。ノアの方舟伝説に登場するノアの息子セムが建設したという伝承から、「マディーナット・サーム(セムの街)」とも呼ばれる。紀元前10世紀頃には、カンラン科の木から採れる香料用樹脂を運ぶ乳香交易によって栄えた。

その後はエチオピア、ビザンツ帝国、オスマン帝国などの支配を受けた。7~8世紀にはイスラム布教の重要拠点となり、イスラムの影響を強く受けながら独自の都市文化を発展させた。スークは神聖な場所とされ、争いと武器の携行が禁じられたため、戦時中も商取引が続いたと伝えられる。

中世アラビア都市の優れた姿を残すことから1986年に世界遺産へ登録された。しかし2015年に勃発したイエメン内戦で旧市街は爆撃を受け、市街地と伝統家屋が損傷した。同年、重大かつ明確な危険にさらされ、大規模な保全と国際的な援助を要する危機遺産リストに記載された。

参考

  • UNESCOOld City of Sana'a
  • 書籍『くわしく学ぶ世界遺産300〈第5版〉』(発行:世界遺産アカデミー/世界遺産検定事務局、発売:マイナビ出版)

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