概要
中国南西部・雲南省で、少数民族の納西族が12世紀末頃に築いた旧市街。茶葉や馬を扱う交通・交易の要衝として漢族やチベット族などの文化を取り入れ、二階建て木造町家、瓦屋根、水路網、壁画、現在も儀礼に使われる象形文字東巴文字に独自の生活文化を伝える。
見どころ
町を潤し浄化した水路網
山からの清流が枝分かれし、石畳の道と木造町家の間を縦横に巡る。小さな石橋と水路が都市景観をつくり、生活用水の供給と街の浄化を担った知恵を今に伝える。
納西族の木造町家と交流文化
二階建ての木造棟が中庭を囲み、彫刻された梁、格子窓、灰瓦、白壁に多民族交流の痕跡が重なる。壁画や東巴文字とともに、納西族が育てた固有の文化を支えた生活空間である。
地理
麗江は中国南西部、雲南省北西部の高原に位置する。登録範囲は大研古城を中心に、白沙と束河の歴史的集落を含む。山から引いた水は町の入口で幾筋にも分かれ、石畳の街路や家々に沿って縦横に流れる。生活用水を町全体へ届けると同時に街を洗い清める、地形を生かした都市システムであった。
街路沿いには、木組みと白壁を用いた二階建ての町家が隙間なく並び、灰色の瓦屋根が連なる。広場、石橋、水路、中庭式住居が一体となった景観には、納西族を軸に漢族・チベット族などとの交流が重ねられ、単一様式ではない地域固有の都市構造が育まれた。
歴史
麗江の都市は12世紀末、宋代末頃に納西族によって築かれた。高原の交通路が交わる場所にあり、茶葉や馬など交易品の集積地として発展する。中国各地や近隣地域から漢族、チベット族らが訪れ、納西族は異なる建築、宗教、芸術を吸収しながら、壁画や東巴文字に代表される独自文化を形づくった。東巴文字は象形文字の一種で、現在も宗教儀礼などに用いられる。伝統的な民族衣装をまとう納西族女性の姿も、この生活文化を今日へ伝えている。
1997年に世界遺産へ登録され、2012年に登録範囲の境界が変更された。旧市街は現在も生活と観光の場である一方、世界的な観光地となった麗江では過剰観光が課題となっている。建物や水路の保存だけでなく、住民の暮らしと儀礼、伝統文化を維持しながら来訪者を適切に管理することが、遺産の価値を未来へつなぐ鍵となる。
