サハラ交易とイスラム文化を育んだスーダン様式の土の都市

ジェンネの旧市街

Old Towns of Djenné

雨季ごとに塗り直される土の壁が、交易都市の記憶を人びとの手でつなぐ。

ジェンネの旧市街のミニチュア

概要

ニジェール川内陸デルタでサハラ越え交易とイスラム文化の中継地として栄えた都市。スーダン様式の土造家屋と大モスク、先イスラム期の4考古遺跡が、洪水に適応した暮らしと西アフリカ都市史を伝える。

  • マリ
  • 文化遺産
  • 1988年登録
  • 検定2級

見どころ

ジェンネ旧市街の広場に立つ土造りの大モスク

土の建築を象徴するジェンネの大モスク

日干しレンガに泥を塗り重ね、柱状の控え壁と木材の足場を外壁に表したスーダン様式の大モスク。街の信仰と共同補修の中心である。

小高い土地に並ぶスーダン様式の土造り伝統家屋

洪水と暮らす土造りの旧市街

洪水を避ける小高い土地に並ぶ伝統家屋は、ポーチや控え壁、正面入口を示す装飾を備える。身近な土を生かした都市の知恵が見える。

地理

ジェンネは、ニジェール川と支流バニ川に挟まれたマリ中部の内陸デルタに位置する。季節的な洪水から建物を守るため、市街の伝統家屋はトゲールと呼ばれる小高い土地に築かれた。登録資産は約48.5haの現存旧市街と、ジェンネ・ジェノ、ハンバルケトロ、カニアナ、トノンバの4考古遺跡からなるシリアル遺産である。

旧市街には、日干しレンガの土台に泥を塗るスーダン様式の家々が約2,000棟残る。垂直性を強調する柱状の控え壁や装飾的な外壁が連なり、中心には高さ約11mの大モスクがそびえる。土という地域の素材、洪水に対応した立地、共同体による補修が一体となった都市景観である。

ジェンネの旧市街の風景

歴史

ジェンネ周辺では紀元前3世紀頃から人びとが暮らし、先イスラム期の都市ジェンネ・ジェノをはじめとする考古遺跡が形成された。やがて内陸部と北アフリカの都市を結ぶサハラ越え交易、特に金交易の市場・中継地として発展した。15〜16世紀にはアフリカにおけるイスラム教布教の重要な中心の一つとなった。

1988年、先イスラム文明の考古遺跡と、スーダン様式の土造建築が残る旧市街が登録基準(iii)(iv)で世界遺産に登録された。伝統技術は石工たちに継承される一方、政情不安定と保護体制の不備、現代建材への置換、都市開発などで価値が損なわれる懸念が強まり、2016年に危機遺産となった。危機遺産は、重大で明確な危険にさらされ、人の働きかけによる改善と大規模な保全、条約上の援助を必要とする遺産であり、ジェンネは現在も保全状況の改善が課題である。

参考

  • UNESCOOld Towns of Djenné
  • 書籍『くわしく学ぶ世界遺産300〈第5版〉』(発行:世界遺産アカデミー/世界遺産検定事務局、発売:マイナビ出版)

公開日: 最終更新: