概要
モンゴル高原のオルホン川流域に、遊牧民の生活景観と歴代草原国家の遺跡が重なる文化的景観。突厥の遺跡、ウイグル王国の都カラ・バルガスン、モンゴル帝国の首都カラコルム、貴重なオルホン碑文が、約2,000年に及ぶ遊牧社会の連続性を伝える。
見どころ
カラコルムとエルデネ・ゾー寺院
モンゴル帝国の首都遺跡と、その近くに築かれた寺院が、草原の政治・交易・宗教の中心が移り変わった歴史を伝える。広い草原の中で都と遊牧世界の関係を見渡せる。
オルホン碑文と遊牧の草原
古代テュルク語で歴史や信仰を刻んだ碑文は、東アジアの文字史を考える重要資料。碑が立つホショー・ツアイダム周辺では、現在も家畜とともに移動する遊牧の景観が続く。
地理
モンゴル高原中央部を流れるオルホン川の広い谷に位置する。教材では流域約1,200kmにわたり多数の考古遺跡が点在するとされ、川、草原、季節ごとの牧地が遊牧民の移動と家畜飼育を支えてきた。
自然の地形を大きく改変せず、草原を季節的に移動する暮らしが約2,000年続いている。遺跡だけでなく、ゲル、放牧地、宗教施設、古い都城が同じ広域景観に共存し、人間が自然と調和して築いた遊牧の社会と文化を現在まで伝える。
歴史
6〜7世紀、トルコ系民族とされる突厥がこの地域に勢力を築いた。8世紀建立のホショー・ツアイダム遺跡から発見されたオルホン碑文には、古代テュルク語で歴史上の出来事と宗教的・呪術的な内容が刻まれている。漢字を除けば東アジアで日本の仮名と並ぶ古い文字史料として重要である。
8〜9世紀にはウイグル王国の都カラ・バルガスンが置かれ、13世紀にはチンギス・ハンが打ち立てたモンゴル帝国の首都カラコルムが営まれた。16世紀にはカラコルムの遺構に近接してエルデネ・ゾー寺院が建立され、草原の政治・交易・宗教の中心が時代ごとに重なった。
2004年、登録基準(ii)(iii)(iv)で世界遺産に登録された。(ii)は建築・技術・都市計画や景観設計の発展における重要な価値観の交流、(iii)は現存または消滅した文化的伝統・文明を伝える独特な証拠、(iv)は人類史の代表的段階を示す建築・技術・景観の顕著な見本を評価する。ここでは都城遺跡だけでなく、現在も続く遊牧民の暮らしそのものが文化的景観の価値を支えている。
