自然と文化を分けないアニシナアベ族の「生命を与える大地」

ピマチオウィン・アキ

Pimachiowin Aki

川と湖が森を結ぶたび、大地から受け取った命を次の世代へ返す営みが見えてくる。

ピマチオウィン・アキのミニチュア

概要

カナダの広大な亜寒帯林に、河川・湖・湿地が連なる複合遺産です。名は先住民の言葉で「生命を与える大地」を意味し、四つのアニシナアベ族コミュニティーが狩猟・採集を基盤とする暮らしを継承しています。文化と自然を切り分けず、両者の調和を一体として評価した点に大きな意義があります。

  • カナダ
  • 複合遺産
  • 2018年登録
  • 検定2級

見どころ

亜寒帯の森林と岩盤の間を河川・湖・湿地が結ぶピマチオウィン・アキの景観

森・川・湖・湿地がつながる大地

岩盤の森を川が縫い、湖と湿地へ連続する眺めは、ピマチオウィン・アキが単なる森林保護区ではなく、水と陸の生態系が一体となった「生命を与える大地」であることを実感させます。

森の水辺にある樺皮のカヌーとドーム形の樺皮住居

土地とともにあるアニシナアベ族の暮らし

樺皮のカヌーや森の小さな居住空間は、狩猟・採集の技術だけでなく、自然を文化の外側に置かない世界観を伝えます。2013年の審査を転換させた価値を読み取れる見どころです。

地理

カナダの亜寒帯に広がり、岩盤の上を縫う河川、大小の湖、湿地、針葉樹を中心とする森林が一つの水系と生態系をつくっています。水辺から森の奥までが狩猟・採集や移動の場であり、四つのアニシナアベ族コミュニティーの生活圏と自然環境が重なります。

文化遺産は登録基準(i)〜(vi)、自然遺産は(vii)〜(x)のいずれかを満たし、双方にまたがるものが複合遺産です。複合遺産という区分は条約本文ではなく、2005年改訂の作業指針で定義されました。ここでは、文化的伝統の独特な証拠を示す基準(iii)、生きた伝統や信仰と実質的に結び付く基準(vi)、森林と水域で続く生態学的・生物学的過程を示す基準(ix)が認められています。基準(vi)は単独ではなく他の基準と併用することが望ましいとされ、この遺産でも文化と自然の基準が組み合わされています。

ピマチオウィン・アキの風景

歴史

一帯では、アニシナアベ族が自然から生活の糧を得ながら、その循環を損なわない狩猟・採集の知識と土地との関係を伝えてきました。彼らにとって文化と自然は別々の対象ではなく、一つの生きた大地です。

2013年の複合遺産推薦では、文化面を審査するICOMOSは伝統的建造物がないこと、自然面を審査するIUCNは北方林に顕著な価値を見いだしにくいことを理由に評価が難しいとし、登録延期が勧告されました。世界遺産委員会の審議には「登録」「情報照会」「登録延期」「不登録」の4段階があります。アニシナアベ族は自然と文化を分ける評価そのものに異議を唱え、その主張は両者の関係性をどう捉えるかという国際的な議論を前進させました。推薦の見直しを経て、2018年に複合遺産として登録されました。なお、文化・自然で別々だった登録基準は2003年の特別会合で統合が決まり、2005年の作業指針に(i)〜(x)としてまとめられ、2007年の審議から適用されています。

参考

  • UNESCOPimachiowin Aki
  • 書籍『くわしく学ぶ世界遺産300〈第5版〉』(発行:世界遺産アカデミー/世界遺産検定事務局、発売:マイナビ出版)

公開日: 最終更新: