ラスコー壁画と旧石器時代の暮らしを伝える渓谷

ヴェゼール渓谷の装飾洞窟と先史遺跡

Prehistoric Sites and Decorated Caves of the Vézère Valley

暗い洞窟の壁を駆ける馬とバイソンは、数万年前の観察と想像の鮮やかさを今に伝える。

ヴェゼール渓谷の装飾洞窟と先史遺跡のミニチュア

概要

フランス南西部のヴェゼール渓谷に密集する旧石器時代の遺跡群。渓谷には147の先史遺跡と25の装飾洞窟があり、後期旧石器時代にクロマニョン人が残したラスコー洞窟の約100点の動物壁画は、優れた観察力と造形表現を示す。洞窟、住居、墓、作業場が人類の長い活動を総合的に伝える。

  • フランス
  • 文化遺産
  • 1979年登録
  • 検定2級

見どころ

ラスコー洞窟を想起させる旧石器時代の馬とバイソンの壁画

動物が躍動するラスコー洞窟の壁画

馬、バイソン、サイ、シカなど約100点の動物像は、輪郭、色彩、動きの表現に優れる。1940年の発見が先史芸術研究の画期となった、渓谷を代表する傑作である。

ヴェゼール渓谷の石灰岩の岩陰に残る旧石器時代の発掘層と石器

クロマニョン人の暮らしを重ねて読む渓谷

洞窟壁画だけでなく、人骨、埋葬、住居、石器製作、狩猟の痕跡が密集する。約40万年前から1万年前まで、人類の生活と表現の変化を連続的にたどれる。

地理

フランス南西部、ヌーヴェル=アキテーヌ地域圏ドルドーニュ県のヴェゼール川流域に位置する。約30km×40kmの渓谷には、旧石器時代の先史遺跡147か所と装飾洞窟25か所が集中し、そのうち洞窟、墓、住居、作業場、原料採取地、狩猟の拠点など15の先史遺跡が世界遺産を構成する。現在の登録面積は約105.733ha、周囲には約17,022haの緩衝地帯が設定されている。

遺跡の年代は約40万年前から1万年前までと幅広く、ヨーロッパ第四紀の先史文化を時系列で整理する基準を提供した。石灰岩の洞窟や岩陰に残る堆積層と壁画が、旧石器時代の人々の住居、狩猟、埋葬、道具づくり、芸術活動を一つの地域の中で結びつけている。

ヴェゼール渓谷の装飾洞窟と先史遺跡の風景

歴史

1868年、ヴェゼール渓谷のクロマニョン岩陰で人骨化石が発見され、発見地にちなみクロマニョン人と呼ばれた。クロマニョン人は旧石器時代の新人であり、後期旧石器時代にこの渓谷へ多数の壁画を残した。その遺跡と美術は、現生人類の文化や生活を考えるうえで重要な資料となった。

1940年、ラスコー洞窟が発見された。洞窟内には野生の馬、バイソン、サイ、シカなどを描いたおよそ100点の動物壁画があり、緻密な観察、豊かな色彩、生き生きとした表現によって先史芸術の傑作と評価される。人の出入りによる環境変化で壁画の損傷が懸念され、1963年に一般公開が停止された。現在は研究者以外の立ち入りを厳しく制限し、近くにつくられた忠実な複製施設ラスコーIIなどで壁画を鑑賞できる。

1979年、卓越した先史美術と旧石器時代文化の証言が評価され、登録基準(i)(iii)で世界文化遺産となった。2023年には小規模な境界変更が承認され、登録地105.733haと広い緩衝地帯によって、脆弱な洞窟内部だけでなく周囲の環境も一体的に守られている。

参考

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