概要
米国テキサス州南部、サン・アントニオ川沿いの5つのミッション施設と、南へ37km離れた牧場からなる文化遺産です。18世紀にフランシスコ会が築いた教会、住居、農園、灌漑施設に、先住民コアウイルテカン族の文化が融合し、自然を題材にした意匠にも交流の跡が表れます。
見どころ
自然の形を刻んだ教会ファサード
石造教会の草花や貝殻を思わせる彫刻には、ヨーロッパの宗教建築とコアウイルテカン族の自然観が交わります。基準(ii)の「価値観の交流」を最も見つけやすい場所です。
川の水を暮らしへ運ぶ灌漑網
石造水路や水門は、教会、住居、農園を支えた実用の基盤です。ミッションを建築物の集合ではなく、水と生産を共有する共同体として理解できます。
地理
テキサス州南部のサン・アントニオ川沿いに5つのミッション施設が連なり、そこから南へ37km離れた場所に牧場があります。各ミッションは教会だけでなく、住居、共同作業の場、農地、水を配る灌漑システムを備え、乾燥しやすい土地で定住生活を営む一つの複合施設として機能しました。川と水路が個々の施設を生活・生産のネットワークへ結びます。
共通する18世紀の植民・布教史をもつ複数のミッションと牧場を、全体で一つの遺産として登録したシリアル・サイトです。シリアル・サイトでは個別施設の価値を並べるだけでなく、構成資産相互の関係と、教会・住居・農園・水利・牧場を結ぶ全体の物語が重視されます。一国内の資産群であり、国境を越えて共同管理するトランスバウンダリー・サイトではありません。
歴史
18世紀、スペイン領北辺でフランシスコ会の修道士たちがミッション施設を築きました。そこには布教のための教会だけでなく、住居、農園、家畜や作物を支える牧場、川の水を導く灌漑システムが整えられました。施設の建設と生活には先住民コアウイルテカン族が深く関わり、ヨーロッパ由来の建築や信仰と先住民の知識・表現が出会いました。教会の装飾に草花や自然を題材にした先住民の意匠が組み込まれていることは、その融合を目に見える形で伝えます。
建築・技術・記念碑・景観設計の発展における重要な価値観の交流を示す基準(ii)により、2015年に文化遺産として登録されました。評価の中心は、一方的なヨーロッパ文化の移植ではなく、スペイン植民地文化とコアウイルテカン族の文化が施設の構成、農業、水利、装飾の中で新しい地域文化へ組み替えられた点にあります。
