概要
ペロポネソス半島の谷に築かれた医療神アスクレピオスの聖域。ドーリア式神殿、トロス、治療・運動施設、ギリシャ屈指の劇場が、祈りと身体活動を結び付けた古代ギリシャ・ローマの治癒文化を伝える。
見どころ
古代ギリシャ屈指のエピダウロス劇場
聖域南東に残る野外劇場は、ギリシャ世界で最も美しい劇場の一つと評される古代建築の傑作。半円形の観客席が舞台を囲む端正な構成を保ち、1955年から毎年開催される芸術祭の舞台として今も使われている。
神殿から広がった古代の医療センター
紀元前390年頃、建築家テオドロスが建てたドーリア式の神殿を中心に、トロス、治療・宿泊施設、運動施設が集まる。病に苦しむ巡礼者を迎え、宗教と医療を結ぶ大規模な治癒センターへ発展した。
地理
ギリシャ南部ペロポネソス半島アルゴリス地方の小さな谷に広がる、医療の神アスクレピオスの聖域である。もとはアポロン・マレアタスへの古い信仰が営まれた場所で、遅くとも紀元前6世紀にはエピダウロスの都市国家が公認するアスクレピオス信仰の中心へ発展した。
聖域にはドーリア式のアスクレピオス神殿、円形建築トロス、巡礼者の治療や滞在に関わる建物、運動施設、劇場が計画的に配置された。神殿と病院施設を一体にした広大な遺構群は、古代ギリシャ・ローマ世界の治癒信仰と医療のあり方を具体的に伝える。
歴史
この地の信仰は、アポロン・マレアタスをまつる古い祭祀から始まった。遅くとも紀元前6世紀には、医療の神アスクレピオスをまつるエピダウロス市の公的聖域として発展し、病の治癒を願う巡礼者を各地から集めた。
紀元前390年頃、建築家テオドロスがドーリア式のアスクレピオス神殿を建設した。主要建造物の多くは紀元前4世紀に整備され、トロス、治療や宿泊に使われた施設、運動施設、劇場が加わって、祈りだけでなく身体と精神の回復を支える大規模な医療センターとなった。こうした施設群はギリシャ時代からローマ時代へ続く治癒信仰を知る貴重な証拠である。
とりわけ聖域南東のエピダウロス劇場は、純粋で完成度の高い古代ギリシャ建築の傑作とされる。1955年以降は毎年の芸術祭にも使われ、古代の劇場機能を現代へ伝えている。1988年、登録基準(i)(ii)(iii)(iv)(vi)で世界遺産に登録された。
