山岳信仰と徳川文化が森に結晶した2社1寺

日光にっこうの社寺

Shrines and Temples of Nikko

杉木立の奥で、極彩色の彫刻と静かな堂宇が神聖な山々の気配に溶け合う。

日光の社寺のミニチュア

概要

栃木県日光市の東照宮二荒山神社ふたらさんじんじゃ輪王寺りんのうじに属する103棟と周囲の自然環境からなる文化遺産。山岳信仰、神仏習合、徳川将軍家の霊廟建築が重なり、建造物と神格化された自然が調和する宗教景観を示す。

  • 日本
  • 文化遺産
  • 1999年登録
  • 検定3級
  • 検定2級

見どころ

杉木立の中に立つ日光東照宮の陽明門

東照宮・陽明門ようめいもん

500体を超す彫刻と金箔で装飾された江戸建築の傑作。杉木立と傾斜地の中で、寛永の大造替の技術が凝縮する。

黒と金を基調とする輪王寺大猷院の社殿

輪王寺大猷院たいゆういん

徳川家光を祀る黒と金の霊廟。家康の東照宮をしのがないという遺志を映す、静謐で格調高い権現造の空間。

地理

登録地域は50.8ha、緩衝地帯は373.2ha。東照宮42棟、二荒山神社23棟、輪王寺38棟の計103棟と、社寺を包む杉の森や山々からなる。103棟のうち9棟が国宝、94棟が重要文化財で、神格化された自然を背景に、傾斜地へ社殿を配する日本の代表的な景観構成を示す。建造物と自然の調和は、日本の伝統的宗教中心地の優れた例であり、神道における人と自然の関係を伝える。

二荒山神社は日光の山岳信仰の中心で、祭神は大己貴命、田心姫命、味耜高彦根命の三神。それぞれ男体山なんたいさん・女峰山・太郎山の山神とされる。社伝では850年に社殿を現在の東照宮鐘楼付近へ移して「新宮」と呼んだ。現在の本社社殿は寛永の大造替以前から残る八棟造で、入母屋屋根、破風、向拝が複雑に組み合わさる。この形式が東照宮の権現造へ受け継がれた。神域入口の神橋は1636年に現在の形式が整えられ、1902年の洪水後に再建された。

東照宮本社は本殿・石の間・拝殿を連結する権現造。陽明門は高さ11.1m、幅7mで、500体を超す彫刻と約24万枚の金箔に飾られる。完成を避けて魔除けとするため、柱1本を逆さにしたと伝わる。神厩舎しんきゅうしゃの三猿は人の一生を表す8面の彫刻の一部で、幼少期の教えを「見ざる・言わざる・聞かざる」で示す。五重塔は心柱を四層目から鎖でつり下げる構造で、風害や地震へ対応する。保存・修復は「日光御宮并御脇堂社結構書」を基準とする。

輪王寺三仏堂は山内最大の建物で、千手観音・阿弥陀如来・馬頭観音を祀る。本地垂迹説のもと、この三仏は男体山・女峰山・太郎山の本地仏として二荒山大神と同一視された。明治の神仏分離令で三仏堂は現在地へ移され、山内は2社1寺に分けられた。東照宮では家康を「東方薬師瑠璃光如来」として祀る。二荒山神社の本社社殿・唐門・拝殿など23棟は重要文化財。輪王寺は国宝の大猷院と重要文化財37棟の計38棟が登録される。

日光の社寺の風景

歴史

勝道上人しょうどうしょうにんは766年に四本龍寺しほんりゅうじを創建し、782年に男体山へ登頂、784年に中禅寺ちゅうぜんじを建立して日光の山岳信仰を開いた。室町時代には数百の僧坊が並ぶ霊場として栄えたが、戦国時代に豊臣秀吉と対立して衰退した。

江戸時代、徳川家康の側近だった僧天海は家康の神霊を祀る東照社を建て、荒廃した社寺も再興した。家康の遺言に従って1617年に東照社が造営され、徳川幕府の聖地として再び信仰を集める。徳川家光は1634〜1636年、1年5か月に及ぶ寛永の大造替を行い、陽明門や三猿で知られる神厩舎など、当時最高の技術による社殿群を整えた。1645年に東照社は東照宮へ改称された。

輪王寺は四本龍寺を起源に、天海が60棟余りを復興した。1643年に没した天海は大猷院内の慈眼堂に祀られる。1653年には家光の霊廟大猷院が造営され、家康の東照宮をしのがないよう、家光の遺言に従って黒と金を基調とする落ち着いた造りとなった。東照宮と大猷院の権現造は江戸時代の建築表現の頂点とされる。

明治政府の神仏分離令によって山内の建造物は東照宮・二荒山神社・輪王寺の2社1寺へ整理された。1999年、建造物群と周辺景観が登録基準(i)(iv)(vi)で世界遺産に登録された。

参考

  • UNESCOShrines and Temples of Nikko
  • 書籍『すべてがわかる世界遺産1500 上』(発行:世界遺産アカデミー/世界遺産検定事務局、発売:マイナビ出版)
  • 書籍『くわしく学ぶ世界遺産300〈第5版〉』(発行:世界遺産アカデミー/世界遺産検定事務局、発売:マイナビ出版)
  • 書籍『きほんを学ぶ世界遺産100〈第4版〉』(発行:世界遺産アカデミー/世界遺産検定事務局、発売:マイナビ出版)

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