概要
天文学者フリードリヒ・フォン・シュトルーヴェが1816~1855年に築いた三角測量網。ノルウェーのハンメルフェスト岬から黒海まで約2,800km、265か所の測地点を連ね、そのうち10か国に残る34か所が世界遺産となり、地球の大きさと形の解明に貢献した。
見どころ
岩盤に刻まれた測量点
広大な測量網は、地表の小さな測地点を精密につないで築かれた。目立たない一つの標識が、約2,800kmに及ぶ三角測量の連鎖を支えた科学史の証拠である。
ハンメルフェストから黒海へ
北極圏のノルウェーから黒海沿岸まで、10か国の34測地点が一本の科学的な線を形づくる。離れた資産を国境越しに守る世界遺産ならではの広がりが見どころである。
地理
測地弧は北のノルウェー・ハンメルフェスト岬から南の黒海まで、約2,800kmにわたって延びる。現在のベラルーシ、エストニア、フィンランド、ラトビア、リトアニア、ノルウェー、モルドバ、ロシア、スウェーデン、ウクライナの10か国を貫く。
調査時に設けられた測地点は265か所で、そのうち34か所が世界遺産の構成資産である。共通する科学的背景をもつ離れた測地点をまとめたシリアル・ノミネーションであり、構成資産が国境を越えるトランスバウンダリー・サイトでもある。こうした遺産は多国間協力による保護・保全を目指す。
歴史
1816年、天文学者フリードリヒ・フォン・シュトルーヴェは、地球の大きさと形をより正確に知るための経線測量に着手した。三角測量とは、基準線の両端から測定点への角度を測り、三角法や幾何学によって位置を確定する方法である。測点から次の測点へ三角形をつなぐことで、広大な距離を一つの測量網として計算した。
1855年までに265か所の測地点を設けたこの事業は、地球の形状と大きさの理解を進め、後の地球科学に大きな影響を与えた。シリアル・ノミネーション・サイトは共通する文化・歴史的背景や自然環境をもつ複数資産を一つの遺産として登録する仕組みで、構成資産が国境を越えればトランスバウンダリー・サイトにもなる。文化遺産では福建土楼群、自然遺産ではカムチャツカ火山群がシリアル資産の例である。トランスバウンダリー・サイトは国境を越える遺産を多国間協力で守る考え方で、もとは国境越しの自然遺産のために考案されたが、かつて一つの文化圏だった文化遺産にも用いられる。自然遺産のワッデン海、文化遺産のベルギーとフランスの鐘楼群がその例である。
34測地点は2005年に登録基準(ii)(iv)(vi)で世界遺産に登録された。(ii)は建築・技術・記念碑・都市計画・景観設計の発展における重要な価値観の交流、(iv)は人類史の代表的段階を示す建築様式・建築技術・科学技術の総合体・景観の顕著な見本、(vi)は顕著な普遍的価値をもつ出来事、伝統、思想、信仰、芸術・文学作品との直接的・実質的な関連を評価する。(vi)は他基準との併用が望ましく、この遺産でも(ii)(iv)と組み合わされている。
