7か国17作品が示す、近代建築の世界共通語

ル・コルビュジエの建築作品―近代建築運動への顕著な貢献―

The Architectural Work of Le Corbusier, an Outstanding Contribution to the Modern Movement

白い住宅から祈りの曲面、都市計画まで、建築が20世紀の暮らしを変えた。

ル・コルビュジエの建築作品―近代建築運動への顕著な貢献―のミニチュア

概要

近代建築の巨匠ル・コルビュジエが設計した、7か国17作品からなる文化遺産。合理的な住居、宗教建築、公共施設、都市計画を通して、鉄筋コンクリート時代の新しい建築思想が世界へ伝播した過程を示す。3大陸にまたがる世界初のトランス・コンチネンタル・サイトであり、2016年に登録基準(i)(ii)(vi)で登録された。

  • アルゼンチン・ベルギー・フランス・ドイツ・インド・日本・スイス
  • 文化遺産
  • 2016年登録
  • 検定3級
  • 検定2級

見どころ

木製台座上に再現した国立西洋美術館本館の精密ミニチュア

上野うえのの国立西洋美術館

松方コレクションの寄贈返還を契機に1959年開館。ピロティ、19世紀ホール、スロープ、自然光と無限成長美術館の発想を一棟で読み取れる。

緑の芝生に立つ白いサヴォア邸

五原則を結晶させたサヴォア邸

ピロティ、屋上庭園、自由な平面、水平連続窓、自由な立面を統合した1931年の住宅。近代建築の教科書のような外観と回遊動線が見どころ。

地理

フランスの10作品を中心に、スイス2作品、ベルギー・ドイツ・日本・インド・アルゼンチン各1作品の計17作品が点在する。国境を越えた資産を一つの遺産として登録するトランスバウンダリー・サイトであり、ヨーロッパ、アジア、南アメリカの3大陸を横断する世界初のトランス・コンチネンタル・サイトでもある。各国の気候、技術、社会に応じて一つの建築思想が展開したシリアル・サイトで、登録面積は98.4838ha、緩衝地帯は1,409.384ha。

日本の構成資産は東京・上野公園の国立西洋美術館本館である。松方幸次郎が1920年代までに集め、戦後フランス政府に接収された松方コレクションを寄贈返還する条件として専用美術館が求められ、1959年に開館した。全体座標や地域分類はシリアル・サイト全体の登録情報に従うため、単独の日本遺産とは異なる扱いになる。

ル・コルビュジエの建築作品―近代建築運動への顕著な貢献―の風景

歴史

ル・コルビュジエは1887年、スイスのラ・ショー=ド=フォンにシャルル=エドゥアール・ジャンヌレとして生まれた。1914年に柱と床スラブを基本とするドミノ・システムを考案し、壁から構造を解放した。1917年にパリへ移り、装飾を抑え幾何学的な形態を重んじるピュリスムを展開。1928年には近代建築国際会議(CIAM)の創設に加わった。フランク・ロイド・ライト、ミース・ファン・デル・ローエと並ぶ近代建築の三大巨匠とされる。

近代建築の原則として、①建物を地面から持ち上げるピロティ、②屋上を生活空間にする屋上庭園、③構造壁に縛られない自由な平面設計、④室内へ均質に光を入れる水平連続窓、⑤構造から独立した自由なファサード(立面)という「近代建築の五原則」を示した。ピロティはフランス語で「杭」を意味し、1階を柱で支えて建物を空中に浮かせたような軽い造形を生む。また、人間の身体寸法と黄金比を結ぶ尺度体系モデュロールを考案し、天井高、柱間、外壁タイルなどの寸法設計に用いた。

ラ・ロッシュ=ジャンヌレ邸は住宅内部を巡る「建築的プロムナード」を示し、ペサックの集合住宅(シテ・フリュージェ)は標準化住宅を社会へ広げた。1931年完成のサヴォア邸と庭師小屋は五原則を一つの住宅に統合する。ポルト・モリトー(ポルト・モリトール)の集合住宅は自邸兼アトリエを含み、ガラス面と集合住宅を結んだ。

戦後のマルセイユのユニテ・ダビタシオンは1952年完成、337戸・23種類の住戸と商店などを一つの垂直都市に収めた。サン・ディエの工場は戦災復興期の工業建築、1955年のロンシャンの礼拝堂は厚い曲面壁と彫塑的な屋根により、五原則の合理主義を越えた宗教空間を生んだ。カップ・マルタンの休暇小屋はモデュロールを極小住居に凝縮し、ラ・トゥーレットの修道院は祈りと共同生活、フィルミニの文化の家は文化・スポーツ都市の構想を伝える。

スイスのレマン湖畔の小さな家は1923年に両親のため湖畔へ建てられ、イムーブル・クラルテは鉄骨とガラスの集合住宅を示す。ベルギーのギエット邸は1927年、アントワープの画家ルネ・ギエットの住居兼アトリエとして設計された。ドイツのヴァイセンホフ・ジードルングの住宅は、ミースが統括した1927年の住宅展へ出品された。

日本の国立西洋美術館は、正方形平面、ピロティ、陸屋根、中央の19世紀ホール、スロープ、自然光を取り込む展示空間をもつ。中心から外へ巻貝状に巡る動線と、収蔵品が増えるたび螺旋状に展示室を増築できる「無限成長美術館」の構想を採用した。弟子の前川國男まえかわくにお坂倉準三さかくらじゅんぞう吉阪隆正よしざかたかまさが実施設計に協力し、2007年に重要文化財となった。

インドのチャンディガールのキャピトル・コンプレックスは、高等裁判所などを含む新都市計画で、ル・コルビュジエの都市構想が全面的に実現した唯一の例である。アルゼンチンのクルチェット邸は1949年にラ・プラタで設計され、南アメリカ唯一の作品として暑い気候と既存市街地へ適応した。

推薦は2009年と2011年に情報照会となった。建築家の生涯を並べる説明から、近代建築運動の思想と世界的影響を証明する構成へ練り直したことで、2016年に登録が実現した。登録基準(i)は個々の建築的創造性、(ii)は思想と技術の国際交流、(vi)は近代建築運動という20世紀の理念との直接的な結びつきを評価する。

参考

  • UNESCOThe Architectural Work of Le Corbusier, an Outstanding Contribution to the Modern Movement
  • 書籍『すべてがわかる世界遺産1500 上』(発行:世界遺産アカデミー/世界遺産検定事務局、発売:マイナビ出版)
  • 書籍『くわしく学ぶ世界遺産300〈第5版〉』(発行:世界遺産アカデミー/世界遺産検定事務局、発売:マイナビ出版)
  • 書籍『きほんを学ぶ世界遺産100〈第4版〉』(発行:世界遺産アカデミー/世界遺産検定事務局、発売:マイナビ出版)

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