概要
イングランド北西部の山岳・湖沼地帯で、氷河期に形成された谷を、石垣で囲む農地や牧草地、邸宅、庭園、公園が彩る文化的景観です。自然と人間の営みが調和した風景は、18世紀のピクチャレスクとその後のロマン主義を刺激し、風景保護の意識も育てました。
見どころ
氷河の谷を縫う石垣の農牧景観
険しい山、細長い湖、氷河が削った谷の斜面を、乾石積みの壁が幾何学のように区切ります。自然地形に沿って何世代も続いた農牧の土地利用こそ、湖水地方を「自然と人間の共同作品」にした土台です。
ピクチャレスクとロマン主義を生んだ湖畔
山影を映す湖と、景観を引き立てる邸宅・庭園・公園は、18世紀以降の画家や詩人を魅了しました。絵画的な美を味わう視点が文学や芸術を育て、やがて風景を守る運動へつながりました。
地理
イングランド北西部に位置する山岳地域で、氷河期の氷河が削ったU字谷や深い湖が連なり、山々が湖面に映ります。その地形に適応した農牧業が続き、土地を区切る乾石積みの壁、牧草地、農家が谷ごとに一体となって、英国の田園に特徴的な景観をつくりました。
さらに、景観の美しさを高めるよう意図的に設けられた大邸宅、庭園、公園も点在します。自然の制約の中で土地利用が発達し、現在も営みが続く「有機的に進化する文化的景観」として、山、湖、農牧地、建築が切り離せない関係を保っています。
歴史
18世紀、湖水地方は風景に絵画のような美的価値を見いだすピクチャレスクの思想によって高く評価されるようになりました。続くロマン主義の芸術家や詩人、作家たちは、山と湖、農村生活が織り成す風景を絵画、素描、詩歌、文学作品に表現しました。
この芸術的評価は美しい景観の重要性への社会的な意識を高め、早期の風景保護運動を促しました。自然と人間の共同作品が芸術・思想と保全にまで影響を与えた点が登録基準(ii)(v)(vi)に結び付き、2017年に世界遺産へ登録されました。
