鉱泉を療養・社交・芸術の都市文化へ発展させた7か国11の温泉保養地

ヨーロッパの大温泉都市群

The Great Spa Towns of Europe

飲泉所の列柱廊を歩けば、湯治が音楽や文学、社交を結ぶ国際文化へ育った時代がよみがえります。

ヨーロッパの大温泉都市群のミニチュア

概要

ヨーロッパ7か国にまたがる11の温泉都市で構成される、国境を越えたシリアル・サイトです。18世紀初頭から1930年代にかけ、鉱泉を中心に浴場、クアハウス、飲泉所、ホテル、庭園、カジノ、劇場などが発達し、国際的な温泉保養文化を形づくりました。

  • オーストリア・ベルギー・チェコ・フランス・ドイツ・イタリア・イギリス
  • 文化遺産
  • 2021年登録
  • 検定2級

見どころ

列柱廊と中央の泉亭を備えたヨーロッパ温泉都市の飲泉所

クアハウスと飲泉所の列柱廊

泉亭と長い回廊を歩くと、温泉水を飲み、散策し、交流するという保養文化が建築に組み込まれていたことが分かります。浴場だけに限られない温泉都市の核心です。

古代ローマ浴場の温泉槽と歴史的なバース市街

古代と近代をつなぐバース

古代ローマの浴場遺構と近代の保養都市建築を一望できるバースは、温泉文化の長い継承を示します。1987年の単独登録と、2021年の構成都市登録の両方を覚えたい場所です。

地理

オーストリア、ベルギー、チェコ、フランス、ドイツ、イタリア、英国の7か国に点在する11都市を、一つの世界遺産として登録しています。各都市では鉱泉の湧出地を核に、温泉浴場、クアハウスやカーザルと呼ばれる療養施設、飲泉所、ホテル、ヴィラ、庭園、会議室、カジノ、劇場が計画的に結びつきました。

登録基準(ii)は建築・技術・都市計画・景観設計の重要な価値観交流を、基準(iii)は現存または消滅した文化的伝統や文明の独特な証拠を対象とします。大温泉都市群は、各地の鉱泉を共通基盤に、療養法、都市計画、建築、社交文化が国境を越えて交流したことと、その文化の証拠を伝えます。

ヨーロッパの大温泉都市群の風景

歴史

18世紀初頭から1930年代にかけて、ヨーロッパの温泉地は治療の場から、宿泊、散策、会議、音楽、演劇、賭博を含む国際的な保養都市へ発展しました。オーストリアのバーデン・バイ・ウィーンにはベートーヴェンが交響曲第9番を作曲した家が残り、ドイツのバーデン・バーデンはブラームスに愛されました。イタリアのモンテカティーニ・テルメにはヴェルディやプッチーニ、チェコのカルロヴィ・ヴァリ(ドイツ名カールスバート)にはゲーテ、マリアーンスケー・ラーズニエ(ドイツ名マリエンバート)にはカフカが訪れました。

フランスのヴィシーは第二次世界大戦中に首都が置かれた街としても知られ、ベルギーのスパは英語の「spa」の語源になったとされます。古代ローマの温泉遺構が残る英国バースは、1987年に「バースの市街」として単独でも世界遺産に登録されています。

複数の構成資産が全体で一つの顕著な普遍的価値を示す遺産をシリアル・サイトといいます。さらに複数国にまたがるためトランスバウンダリー・サイトでもあり、関係国の共同推薦と共同管理が重要です。2021年、7か国11都市が登録基準(ii)(iii)で一つの世界遺産に登録されました。

参考

  • UNESCOThe Great Spa Towns of Europe
  • 書籍『くわしく学ぶ世界遺産300〈第5版〉』(発行:世界遺産アカデミー/世界遺産検定事務局、発売:マイナビ出版)

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