四分庭園で楽園を表したイラン各地の9庭園

ペルシア庭園

The Persian Garden

乾いた大地に水路が十字を描き、空・大地・水・植物からなる理想郷をひらく。

ペルシア庭園のミニチュア

概要

イラン各州に点在する9つの庭園からなる連続資産。アケメネス朝のキュロス2世の時代にさかのぼる様式をもち、空・大地・水・植物を担う区画へ四分する。エデンの園を思わせる四分庭園チャハル・バーグは、西アジアからインド、スペインまで庭園芸術へ影響した。

  • イラン
  • 文化遺産
  • 2011年登録
  • 検定2級

見どころ

十字状の水路と園路が四区画を形づくるペルシア庭園のチャハル・バーグ

水路が描くチャハル・バーグ

庭園を十字に分ける水路と園路を正面から見ると、四つの区画が空・大地・水・植物を担う設計がよく分かる。乾燥地に水と緑で秩序をつくる技術と思想が見どころ。

水路と糸杉と花壇の奥に装飾建築が立つイランのエラム庭園

エラム庭園に息づく理想郷

水面、糸杉、花壇、装飾的な建築が一直線の眺望に重なる。エデンの園を思わせる理想郷を、幾何学と植栽の調和によって現実の空間へ移した庭園である。

地理

9つの庭園はイラン国内の異なる州に点在するが、いずれも敷地を幾何学的に分け、水路、植栽、建築を秩序立てる共通原理をもつ。乾燥した周囲から塀で区切られた内部へ水を導き、空・大地・水・植物を象徴する四区画として構成する。

この四分庭園はチャハル・バーグと呼ばれ、十字状の水路や園路を軸に眺望を整える。構成資産のエラム庭園では、水、樹木、花、建築が重なり、自然を人の意図で秩序化したペルシア庭園の理想を具体的に観察できる。

ペルシア庭園の風景

歴史

ペルシア庭園の様式は、アケメネス朝ペルシアの初代皇帝キュロス2世(大キュロス)の時代に起源をもつ。ゾロアスター教における空・大地・水・植物の役割を四区画で表し、のちに「エデンの園」という理想郷の概念を具現化する庭園として発展した。幾何学的なチャハル・バーグの設計は、西アジア各地だけでなくインドやスペインの庭園芸術にも大きな影響を与えた。

庭園は、自然と人間が共同でつくる文化的景観のうち、庭園・公園などを意図的に設計する「意匠された景観」の典型として理解できる。この概念は、世界遺産が欧州の石造建築へ偏っていた反省から地域・文化の不均衡を改め、従来の西欧中心の見方より柔軟に遺産を捉えるため1992年に採択された。文化遺産と自然遺産の境界に位置するが分類上は文化遺産であり、自然の制約の中で社会が社会的・経済的・文化的に発展した姿を示す。世界で初めて文化的景観の価値が認められたのは、1993年のトンガリロ国立公園である。

文化的景観にはほかに、社会・経済・政治・宗教上の要求から自然へ対応して形成された「有機的に進化する景観」があり、発展の止まった残存景観と、今も変化を続ける継続景観に分かれる。また、自然要素と民族の宗教・芸術・文学が強く結び付く「関連する景観」もある。価値を示せる十分な範囲が必要で、道・運河・文化交流や通信網など長い線状区域も対象になり得る。保護には文化と自然双方への配慮、地域共同体の協力、資産と緩衝地帯の明確化が欠かせない。

2011年に登録基準(i)(ii)(iii)(iv)(vi)で世界遺産となった。(i)は創造的資質を示す傑作、(ii)は建築・技術・都市計画・景観設計における価値観の交流、(iii)は文化的伝統や文明を伝える独特な証拠、(iv)は人類史の一段階を代表する建築・技術・景観の顕著な見本、(vi)は顕著な普遍的価値をもつ出来事・伝統・思想・信仰・芸術や文学との直接的な関係を評価し、他基準との併用が望ましい。五つの基準が、設計の創造性、国際的影響、長い伝統、庭園形式の代表性、理想郷の思想をそれぞれ捉えている。

参考

  • UNESCOThe Persian Garden
  • 書籍『くわしく学ぶ世界遺産300〈第5版〉』(発行:世界遺産アカデミー/世界遺産検定事務局、発売:マイナビ出版)

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