概要
セーシェルのプラスリン島に、ほぼ原生状態で残るヤシ林。先史時代を思わせる景観から「生きた博物館」と呼ばれ、直径約50cm、重さ約20kgにもなる世界最大の種子をもつフタゴヤシが群生する。樹齢800年を超える個体を含む固有ヤシの森は、希少な動植物と、島で続く進化・受粉・種子散布などの生態過程を守る。
見どころ
世界最大の種子をもつフタゴヤシ
直径約50cm、重さ約20kgに達することもあるフタゴヤシの実。中にある特徴的な二つに分かれた形の種子は植物界最大で、メ渓谷を象徴する存在である。
先史の姿を残すヤシの森
巨大な扇形の葉をもつ古木から若いヤシまでが重なり、6種の固有ヤシと多様な生物が共存する。先史時代の景観を思わせる「生きた博物館」を歩ける。
地理
メ渓谷自然保護区は、インド洋に浮かぶセーシェル諸島北東部のプラスリン島中央部にある。最初の所有者が5月に土地の権利を得たことから、フランス語で「5月の谷」を意味するヴァレ・ド・メの名が付いたとされる。花崗岩質の島の低・中標高域に、先史時代を思わせるヤシ林がほぼ原生状態で残り、「生きた博物館」と呼ばれる。
森を代表するフタゴヤシ(ココ・デ・メール)は、直径約50cm、重さ約20kgにもなる巨大な実をつけ、その種子は植物界最大として知られる。樹齢800年を超える個体もある。フタゴヤシを含むセーシェル固有の6種のヤシが一か所に共存し、タコノキ類や広葉樹とともに、栄養循環・受粉・種子散布が働く独自の森林生態系を形づくる。
歴史
プラスリン島では長い地理的隔離のもとで固有のヤシ類と動物が進化し、メ渓谷には自然のヤシ林がほぼ原生状態で残された。とりわけフタゴヤシはこの森を世界的な生育中心地とし、古木から実生までがつながる森の更新過程を現在も観察できる。
森はフタゴヤシだけでなく、プラスリン島に限られるセーシェルクロオウムをはじめ、固有のヤモリ、ハト、ヒヨドリ、タイヨウチョウ、カメレオン、カエルなど希少な動植物の避難地でもある。ヤシがつくる環境の中で受粉・種子散布・栄養循環などが続くため、生物進化と生態学的過程を示す場として重要である。
1983年、美しい原生的景観、島の地質・生物進化、進行中の生態過程、生物多様性のすべてが評価され、自然遺産の4基準(vii)(viii)(ix)(x)で世界遺産に登録された。森林火災、外来種、病害虫、フタゴヤシ種子の違法採取は、森の世代更新を脅かすため、継続的な管理が必要である。
