概要
ニジェール、ベナン、ブルキナファソの国境を越えて広がる自然遺産。スーダン・サヘル・サバナの草原、低木林、拠水林、川や湿地が連続し、西アフリカ最大のゾウ個体群や、地域で唯一存続可能なライオン個体群を守る。
見どころ
国境を越えて歩く西アフリカゾウ
乾いた草原と、川沿いにだけ濃く伸びる拠水林の境界は、多くの大型哺乳類が水と餌を得る生命線。西アフリカ最大のゾウ個体群が季節に応じて移動できる連続した生息地である。
名の由来になったニジェール川のW字蛇行
ニジェール川が左右へ大きく折れ、文字のWのような蛇行を描くことが公園名の由来。川、砂州、湿地、拠水林が接することで、陸上から水中まで多様な生態系が連なる。
地理
ニジェール、ベナン、ブルキナファソの国境を越えて連なる、西アフリカ最大級の保護地域複合体である。三国にまたがるW地域公園、ベナンのペンジャーリ国立公園、ブルキナファソのアルリ国立公園、ベナンとブルキナファソにある4つの狩猟区域からなる。Wの名は、ニジェール川が登録地付近で大きく曲がり、文字のWのような蛇行を描くことに由来する。
サハラ砂漠南縁の半乾燥草原地帯であるスーダン・サヘル・サバナを広く覆い、草原、低木林、樹木サバナ、川、池、湿地が連続する。川沿いには、周囲の乾いた大地と対照的に、湿地の外から流れ込む水路の両岸に発達する拠水林が伸びる。この陸上・半水生・水生環境の連なりは、西アフリカのサバナ帯で最大かつ重要な生態系の一つである。
西アフリカ最大のゾウ個体群と、この地域で唯一存続可能とされるライオン個体群を支え、リカオン、チーター、ヒョウ、セーブルアンテロープ、コリンガゼル、アフリカマナティなどが生息する。他地域で姿を消した、または絶滅の危機にある大型哺乳類の避難所となり、いったん見られなくなった種が再確認された例もある。
歴史
1996年、ニジェールのW国立公園が最初に世界自然遺産へ登録された。広い生態系は国境で途切れないため、2017年にベナンとブルキナファソのW地域、ペンジャーリ、アルリ、狩猟区域を加えて大幅に拡張し、現在の三国共同のW・アルリ・ペンジャーリ国立公園群となった。登録基準(ix)はサバナ、水辺、森林を結ぶ生態過程、(x)は希少な大型哺乳類を含む生物多様性を評価する。
UNESCOは各国と連携し、ゾウをはじめとする絶滅危惧種の保護を進めている。一方、綿花栽培の農地を確保するための掘削が周辺住民によって行われ、生息地への圧力となっている。複数の民族集団が国境周辺で暮らしを営むため、一律の禁止措置を共通に適用しにくいことも管理上の課題である。国境を越えた生態系の保全には、野生動物だけでなく、三国と地域社会を結ぶ継続的な協力が欠かせない。
