概要
中国・杭州市の中心にある西湖と、その周囲の寺院、楼閣、庭園、三つの島、二本の堤が織り成す文化的景観です。9世紀の唐代以来、白居易ら多くの文人墨客を引きつけ、13世紀の南宋期に中国の伝統美を代表する景観となり、日本や韓国の庭園設計にも影響しました。
見どころ
曲院風荷の蓮景
西湖十景の一つで、蓮の広がる水面と伝統的な楼閣が調和します。自然を庭園的に見せる西湖の美意識を端的に味わえる場所です。
三つの島と二本の堤がつくる眺望
湖上の島々と堤が視界を分節し、歩くたびに異なる景色を開きます。日本や韓国へも影響した東アジアの庭園設計を実感できます。
地理
西湖は杭州市中心部にあり、湖と周囲の山地という自然環境に、寺院、楼閣、庭園、湖上の三つの島、湖面を分ける二本の堤が重なります。これらの要素は視線の先に次の景物が現れる絵画的な眺望を生み、千年以上に及ぶ人々の営みが自然を損なわずに美の秩序へ組み込んできたことを示します。
1978年の登録開始から1990年代初頭まで、世界遺産は建造当時の姿を残すヨーロッパの教会や城など石造文化へ偏り、リストの信頼性を保つため不均衡の是正と登録概念の見直しが進められました。そこで1992年の第16回世界遺産委員会で作業指針に加えられた文化的景観は、「自然と人間の共同作品」に当たる概念です。文化遺産に分類されながら自然遺産との境界に位置し、従来の西欧中心の見方より柔軟に文化を捉えられるようにしました。1993年のトンガリロ国立公園が世界で初めてこの価値を認められました。意図的に設計した庭園などの「意匠された景観」、発展が止まった残存景観と今も発展する継続景観からなる「有機的に進化する景観」、宗教・芸術・文学と結びつく「関連する景観」の三つの捉え方があり、西湖では特に意匠と文学的結びつきが鮮明です。
歴史
9世紀の唐代以来、西湖の風光明媚な景観は白居易をはじめ多くの文人墨客を引きつけました。13世紀に南宋が杭州を首都とすると、西湖は中国の伝統的な美意識を代表する景観へ発展しました。その庭園設計と眺望構成は日本や韓国にも影響を与えています。
2011年、景観設計を通じた東アジアの価値観の交流を示す基準(ii)、長く続く文化的伝統の独特な証拠である基準(iii)、文学・芸術的所産と直接結びつく基準(vi)によって登録されました。基準(vi)は一般に他基準との併用が望ましく、本遺産でも(ii)(iii)と組み合わせて評価されています。文化的景観の保護には文化と自然双方への配慮、地域共同体の協力、資産とバッファー・ゾーンの明確な範囲設定が必要で、道や運河など長い線状の区域も価値を示す範囲になり得ます。
