概要
ポーランドとウクライナのカルパティア地方に点在する、ツェールクヴァと呼ばれる木造教会16資産です。16〜19世紀、東方正教会とギリシャ・カトリックの共同体が地域の伝統技法を生かして建設しました。3室構成と、四角形・八角形の構造に載るドーム状の屋根を共有しつつ、地域ごとに多彩な様式を見せます。
見どころ
三つの室がつくる上昇する輪郭
三室を連ね、その上に四角形や八角形の木造部と屋根を重ねる構成が見どころです。正面から斜めに見ると、平面の区切りが立体的な三つの高まりへ変わる仕組みを読み取れます。
16資産に広がる地域様式の違い
共通の礼拝伝統をもちながら、塔の高さ、八角形の積み方、軒やこけら葺き屋根の重なり方は地域ごとに異なります。一棟だけでなく、国境を越えた連続性と変化を比べることが醍醐味です。
地理
カルパティア地方の山麓に、ポーランド側とウクライナ側を合わせた16件の木造教会が点在します。各教会は三つの室を連ねる構成を基本とし、四角形または八角形の木造部分を積み上げ、段状のドーム屋根や塔をつくります。同じ文化圏でも地形・共同体・建築伝統に応じて輪郭や屋根の構成が異なります。
共通する文化・歴史・自然環境をもつ複数資産が全体で顕著な普遍的価値を示す遺産をシリアル・サイトと呼びます。各構成資産が単独で価値のすべてを備える必要はなく、相互の関係と全体の物語が重要です。将来の追加を見込む段階的推薦も認められ、複数国にまたがる場合は共同管理委員会などが必要になります。大陸を越えるものはトランスコンチネンタル・サイトと呼ばれ、国ごとの法制度・保全体制の差が課題になります。この教会群は、国境を越える遺産を協力して守るトランスバウンダリー・サイトでもあります。
歴史
16〜19世紀、東方正教会とギリシャ・カトリックの共同体が、石造建築を単に木へ置き換えるのではなく、地域の木工技術と礼拝空間を結び付けてツェールクヴァを築きました。現存または消滅した文化的伝統の独特な証拠を評価する基準(iii)と、人類史の代表的段階を示す建築・技術の顕著な見本を評価する基準(iv)により、2013年に16資産が登録されました。
トランスバウンダリーの考え方は、もともと国境で分断できない自然遺産の保護から発展しましたが、国境を越える同一の歴史・文化圏にも適用されます。関係国の共同推薦と共同管理機関の設置が強く推奨され、遺産名やバッファー・ゾーンを変更する際には全関係国の同意が必要です。シリアル・サイトの構成資産が国境を越える場合は、シリアルとトランスバウンダリーの両方の性格をもちます。
