夜の海から来る、ぬめる海坊主
ぬるぬる坊主
海坊主(原典での呼称)
沖に星が一つ、こちらへ寄ってくる。のたり、のたり。押しても掴めず、ただぬるりと寄りかかってくる。何がしたいのかは、九十を越えた古老だけが知っていた。かゆいのだ、と。
Overview
鳥取県・米子付近の海に現れたとされる海坊主の一種。胴回り二尺ほどの杭のような姿で、頭に一つの目のようなものをもつ。全身がぬるぬるとして掴みどころがなく、人を見ると近づいてもたれかかってくる。
Encounter
夜遅く海辺を通ると、沖の彼方に星のように光るものが見える。近づくにつれ、それは杭のような形の黒い影となり、海の上をのたりのたりと歩いて陸へ上がってくる。やがて音もなく間合いを詰め、通りかかった人の体へぬるりともたれかかってくるという。
Lore
原典は江戸期の怪談集『因幡怪談集』で、郷土研究家・荻原直正の『因伯伝説集』に引用される。原典では老人が「これは海坊主というものであろう」と語るのみで固有の名はなく、村上健司は水木しげるがこの海坊主に「ぬるぬる坊主」の名を与えたと推測している。
Traits
胴のまわり二尺ほどの杭のような体をもち、頭とおぼしき箇所に一つの目のようなものが光る。全身が油でぬめり、組みついても掴みどころがない。ある古老によれば、体が痒いために全身の油を人へ擦り付けようとしてもたれかかるのだといい、船を沈めるような悪事は働かない。