雪の夜道につきまとう足音
ぴしゃがつく
びしゃがつく / ピシャどん(京都府での呼称とされる)
振り返れば、道には誰もいない。だが前を向いて歩き出せば、また背後で「びしゃ、びしゃ」と鳴る。速く歩けば、足音も速くなる。追ってくるのは、はたして何なのか。
Overview
福井県坂井郡に伝わる音の怪。冬のみぞれ降る夜道を一人歩くと、姿の見えぬ何かが「びしゃびしゃ」と足音を立てて背後から付いてくる。べとべとさんと同類とされる。
Encounter
冬、みぞれや雪の降る暗い夜道を一人きりで歩いていると起こる。前だけを見て急いでも、背後からは確かに「びしゃ、びしゃ」とみぞれ混じりの道を踏む足音が付いてくる。振り返っても道には誰もいない。それでも足音だけは、こちらの歩みに合わせて絶えず追ってくるのである。
Lore
大藤時彦ほか『綜合日本民俗語彙』第3巻(平凡社、1955年)に「びしゃがつく」として、福井県坂井郡の怪異と記録される。奈良県などの「べとべとさん」と同類の音の怪とされ、後に水木しげるが妖怪画・妖怪図鑑で紹介したことで「ぴしゃがつく」の表記でも知られるようになった。古文献の一次記述は確認されていない。
Traits
姿を持たず、ただ足音としてのみ現れる。人に襲いかかることも、危害を加えることもない。静かな夜道でこちらの足音に紛れるように「びしゃびしゃ」と鳴り、振り返っても決して姿を見せない。前を向いて急ぐほど、背後の足音はいよいよ確かに、いよいよ近く感じられてくる。