夜の山道で人をさらう大きな影
やんぼし
ヤンボシ / ヤンブシ / やんぶし
日が落ちた山道で、行き会う人と声をかけ合う。それは礼儀ではない。おまえが化け物でないと、確かめ合うための言葉だ。答えの返らぬ大きな影に気づいたら、もう遅い。振り向いて走っても、それは同じ速さでついてくる。
Overview
やんぼしは、九州南部の日向(宮崎県)・大隅(鹿児島県)や奄美群島に伝わる妖怪。夜や夕方の山道で時折出会うもので、ぼうっと大きな人影のように広がって現れる。名は「山伏(やまぶし)」の訛りとされ、山で死んだ山伏の幽霊とも語られる。夜に山へ行った者がやんぼしにさらわれる、すなわち神隠しの原因ともいわれた。
Encounter
日向・大隅の山道を、夜あるいは夕暮れに歩いていると時折出会う。人から離れた所にぼうっと大きな人影となって現れ、時に近づいてくる。宮崎では坊主が首をくくった場所に必ず出るとされ、夜に山へ入った者はさらわれた。気づいて走って逃げても追ってくるが、こちらが気づかなければ向こうも気にしないという。
Lore
鹿児島県肝属郡百引村(現・鹿屋市輝北町)や宮崎県、奄美群島に伝わる。田畑英勝「奄美の妖怪について」(『琉大史学』六号、一九七四年)に夜の山道に出る大きな人影として記録され、村上健司『妖怪事典』にも項目がある。南九州で夜の山道に出る妖怪「やんぼし」の語は小学館『日本国語大辞典』にも見える。
Traits
姿はぼんやりとした大きな人影で、輪郭は判然としない。夜や夕方の山道、とりわけ坊主が首をくくった場所に現れる。人が気づけば追いかけてさらい、夜の山中で行方知れずになる神隠しの正体ともされる。だが人がその存在に気づかなければ、やんぼしもまた人に構わず通り過ぎるという。奄美では髪を振り乱した姿で語られた。