山路を黒く塞ぎ、人を迷わせ墓穴に閉じ込める化け物
シチ
シチマジムン / ヒチ / ヒチマジムン
クルク山の暗い山路で、行く手がふいに真っ黒に塗り潰された。道いっぱいの霧が、じっと立っている。逃げようにも足はあらぬ方へ進み、気づけば見知らぬ墓穴の底だ。褌を外して振れ、頭にかぶれ。あとは草木にしがみつき、夜明けの鶏を待つほかない。
Overview
シチ(シチマジムン)は、沖縄本島北部の山原地方に伝わる黒い霧状・雲状の化け物。マジムンの一種で、山路を歩く者の前に道いっぱいの真っ黒な姿で立ち塞がり、先へ進めなくする。人に憑いて迷わせ、ときに墓穴へ閉じ込めるが、直接の危害は加えないとされる。塗壁や塗坊とよく似た、行く手を阻む妖怪である。
Encounter
クルク山のような小高い山のあたりの山路を歩いていると、いきなり真っ黒なものが道いっぱいに立ち塞がり、先へ進めなくなる。姿形の見えない、ぼんやりとした霊のようなもので、道の辻に現れて神隠しを起こす。板戸の節穴からでも自由自在に出入りし、風のように山川を駆けめぐって人の前に現れる。
Lore
沖縄本島山原地方の妖怪として、島袋源七の民俗資料『山原の土俗』(1929年執筆、1974年に『日本民俗誌大系』第1巻として刊行)に記録される。沖縄・奄美に伝わる悪霊の総称マジムンの一種に数えられ、福岡県遠賀地方の塗壁や長崎県壱岐島の塗坊とよく似た存在として位置づけられる。
Traits
黒い霧のような姿で山路を塞ぎ、先へ進ませない。人に憑く性質もあり、憑かれた者はあらぬ方向へ連れ出され、一週間でも二週間でも迷子になってしまう。ときには墓穴の中に閉じ込めることもある。ただし直接の危害は加えないという。地べたの草木にしがみつき、明け方に鶏が鳴くのを待てば、憑いたシチは自然と離れていく。