先祖を乗せて生まれる盆の赤蜻蛉

トンボツイタチ

蜻蛉朔日 / トンボ朔日

釜の蓋が開く音を、人は聞かない。ただ七月一日の朝、田の上を赤いものがひとつ、またひとつと殖えていく。あれは虫ではない。去年の祖父が、鞍を背負って帰ってくる姿だ。だから網を伏せ、手を合わせる。盆のあいだ、空は先祖でいっぱいになる。

トンボツイタチ figure art

Danger and Rarity

D
戦闘力

直接人を害する力は伝えられていない。

D
敵対性

人への害意はなく、時に福さえもたらす。

B
稀少性

各地に類話はあるが、遭うには条件がいる。

Overview

トンボツイタチ(蜻蛉朔日)は、七月一日をさす京都府京丹後の呼び名。この日に地獄の釜の蓋が開いて盆の準備がはじまり、赤トンボがこの世に生まれるという。盆のころ増える赤トンボ(ウスバキトンボ)は各地で精霊トンボ・盆トンボと呼ばれ、先祖の霊が姿を変えた乗り物とみなされた。妖怪というより盆の民俗信仰に属する。

Encounter

京都府中郡三重(現・京丹後市)で、七月一日をトンボツイタチという。この日、地獄の釜の蓋が開き、あの世から先祖の霊が帰りはじめ、その乗り物として赤トンボがこの世に生まれるとされる。盆の入りとともに、田や家のまわりを群れ飛ぶ赤トンボのなかに、帰ってきた先祖の気配が重ねられて現れる。

Lore

蜻蛉朔日(トンボツイタチ)は陰暦七月一日を赤蜻蛉の現れる日として捕獲を禁じる語で、季語にも採られる。七月一日を「釜蓋朔日」とよび地獄の釜の蓋が開いて盆が始まるとする伝承は全国に広い。盆のころ増えるウスバキトンボは精霊トンボ・盆トンボと呼ばれ、先祖の霊の化身・乗り物とする俗信が西日本を中心に伝わる。

Traits

七月一日、地獄の釜の蓋が開くと、赤トンボは先祖の霊を乗せてこの世に生まれ出る。盆のあいだ田畑や軒先を群れ飛び、これを捕ることは固く忌まれた。岡山では盆トンボ、奄美・喜界島でも盆トンボと呼び、背に鞍に似た模様を負う個体もあるという。ショウロウヤンマ・ショウロウの名も精霊を意味し、トンボ自体が先祖の霊の乗り物、ある種の神とみなされた。

トンボツイタチ cover image