家を建ててはならない魔の通り道
ナワスジ
縄筋 / ナオスジ / ナメラスジ / ナマムメスジ / ナワメスジ / 魔物筋
その道は、地図に描かれるずっと前から使われていた。誰の道かは、夜ごとそこを通るものたちだけが知っている。ふさげば、取り立てにくる。真っ黒な顔が枕元をのぞき込み、胸の上にそっと手をのせて、静かに問う――ここは、おまえの道だったか。
Overview
ナワスジ(縄筋)は、悪魔や化け物が通るとされる、行く先が見えないほど細長い一本道。香川県坂出市ではナオスジ・ナワスジと呼び、この道を潰して家や建物を建てると凶事が起こるといわれた。近畿・四国・中国地方に広く分布し、岡山や兵庫ではナメラスジ、ナマムメスジ、魔物筋などとも呼ばれる、魔性の通り道の俗信である。
Encounter
昭和十四年ごろ、坂出市川津町連尺のポンプ場横に、ナワスジの一部を潰して新道が造られた。ポンプ場には宿直室があったが、そこに泊まる職員はやがて怪異に見舞われた。夜中の三時ごろ、突然胸を締めつけられるように苦しみ、真っ黒な顔に真っ赤な口をした化け物を見る。窓の外を走り去る足音や、窓に砂利を投げつける音が続いたという。
Lore
ナワスジは近畿・四国・中国地方に分布する「魔物の通り道」の俗信で、坂出市周辺での呼称。怪異・妖怪伝承データベースには香川のナワスジをクビキレウマの通る道筋とする採録がある。村上健司『妖怪事典』(毎日新聞社、2000年)、水木しげる『水木しげるの憑物百怪』下(小学館、2005年)に記載され、ナメラを蛇の青大将とする説も伝える。
Traits
決まった細い一本道を、化け物の群れが夜ごと行き来する。その筋を断ち切り家を建てた者のもとには、真っ黒い顔の異形が現れ、寝入る胸を締めつける。首を絞めるような苦しみ、走り去る足音、砂利の礫。人とも動物ともつかぬ集団が、通り道を奪われた恨みのように押し寄せる。神棚を設けて祓えば、ようやく静まるという。