そば屋に化けた、城山の隻眼大入道
一つ目の黒坊主
「うわさなど、ただのうわさよ」と笑った舌の根も乾かぬうちに、そば屋はくるりと振り返り、雲を突く大入道に変わった。肝の据わった住職の正気も、そこまでだった。
Overview
一つ目の黒坊主は、伊予松山(現・愛媛県松山市)に伝わる妖怪。夜な夜な松山城の城山の石垣に出るとの噂があり、これを確かめに出た浄富久寺の住職の前に、そば屋の姿を借りて現れる。正体を尋ねられると、たちまち一つ目の大入道と化し、住職を驚かせて正気を失わせたという。
Encounter
松山城の城山の石垣のそばは、かつて罪人を処刑した場所とされ、夜な夜な黒坊主が出るという噂があった。これを確かめようと夜更けに一人で出かけた浄富久寺の住職の前に、黒坊主はそば屋の姿を借りて現れたという。
Lore
黒坊主は日本各地に伝わる黒い僧形の妖怪の総称としても用いられるが、東京や熊野などに伝わる、眠る人の息を吸うという黒坊主とは系統を異にするとみられる。松山のこの話は、正体を一つ目の大入道とする点に特色がある。
Traits
普段は石垣の陰に潜み、疑い深い相手にはそば屋など人の姿を借りて近づく。正体を尋ねられると、答える代わりにたちまち雲を突くほどの大入道と化し、大きな顔の真ん中にただ一つギラギラと光る目をむき出しにして、見た者の正気を奪うという。