酒代を薪で返す義理堅い大男
三吉鬼
樽が空になる頃、戸口の外で何かが軋む音がする。朝になれば、代金の代わりに山と積まれた薪と、切り倒した覚えのない松の大木。文句を言う者はいない。仇をなされるくらいなら、黙って盃を重ねた方がいい。
Overview
秋田の酒屋に現れ、大量に酒を飲みながら代金を払わずに去る素性不明の大男。無理に請求すると仇をなすが、黙って飲ませておくと翌朝には酒代の何倍もの薪が積まれている。太平山に祀られる三吉様の信仰が背景にあるとされる。
Encounter
秋田の酒屋にふらりと現れ、注がれるままに大酒を飲み干す。代金を無理に求めると仇をなすが、黙って飲ませ続ければ、翌朝には戸口に酒代の十倍ほどの価の薪が積まれている。噂が広まると、自ら進んでこの男に酒を勧める者も現れたという。
Lore
江戸後期の女流文人・只野真葛が仙台での見聞を記した随筆『むかしばなし』に、酒屋で代金を払わず薪で返礼する男の話として記録される。秋田県太平山に祀られる三吉霊神(みよし様)への信仰が背景にあるとされ、太平山三吉神社には元禄4年(1691年)の棟札に「仙人三吉権現」の名が残る。
Traits
大酒を飲むが代金の代わりに、一夜のうちに桁外れの量の薪を用意したり、庭木として大松の大木を移し替えたりする怪力を持つ。酒樽を供えて願をかければ、翌朝には望みが叶っているとも伝わる。太平山の山の神・三吉様の眷属とする信仰が背景にあるとされる。