墓場に垂れ下がる、提灯の火影
不落不落
竹に結ばれた提灯が、誰も持たぬまま道へ傾いでいる。裂け目は口のように開き、ゆらりゆらりと灯る。今夜、竹寺には新しい仏が運ばれてくる。その道しるべなのか、見送りなのか。火影は問いに答えない。
Overview
京都の竹寺(地蔵院)の墓場に現れるとされる、提灯の姿をした怪火。鳥山石燕が妖怪画集『百器徒然袋』に「不々落々」として描いた妖怪を、水木しげるが新しい仏の運ばれる晩に灯る墓場の提灯として紹介したことで知られるようになった。
Encounter
新しい死者が寺へ運ばれてくる晩、竹林に囲まれた墓地の道に姿を見せるという。竹に結びつけられたように傾いた提灯が、裂け目を口のように開いて道へおおいかぶさる。近づいても持ち手はなく、火影だけが揺れて見える。
Lore
鳥山石燕の妖怪画集『百器徒然袋』(1784年刊)に「不々落々」として描かれた妖怪で、石燕はその火の正体を、野に隠れ住む狐が灯す狐火ではないかと推測している。石燕の図以外に、民間伝承としての類話は確認されていない。
Traits
提灯そのものに骨や紙の傷みはなく、常にわずかに撓んで道へ傾いている。灯る火は狐火に似た冷たい光で、実際に何かが燃えているわけではないという。人を襲う力は伝えられておらず、新しい仏を送る晩の空気を、ひとつ余分な灯りで揺らすだけの存在とされる。