古道具の群れが化けた付喪神
化け古下駄
夜道に「鼻痛い、鼻痛い」と声が過ぎる。姿はない。ただ藪の奥で、擦り切れた道具たちが今夜も歌い踊っている。
Overview
蓑、笠、太鼓、下駄などが集まって化けたもの。夜中に「鼻痛い」と泣き声をあげるが、焼くと怪異は止んだ。
Encounter
化け古下駄が現れるのは、陸前寒風沢(現・宮城県塩竈市寒風沢島)の夜更けた町筋。姿は見えぬまま「鼻痛い、鼻痛い」という声だけが通り過ぎ、竹の棒でかき回しても何の手応えもない。声を追って藪に踏み込むと、暗がりの奥から歌うような騒がしい物音が聞こえてくるという。
Lore
この話は巖谷小波編『大語園』第七巻(1935年)に、宮城県寒風沢で採集された伝承として収められている。海辺に打ち上げられた蓑・笠・太鼓・破子などの古道具が寄り集まって化けたとされ、片方の鼻が欠けた古下駄が「鼻痛い」の主だったという、道具の欠損が正体を明かす付喪神譚である。
Traits
化け古下駄は一体ではなく、蓑・笠・太鼓・破子など寄せ集めの古道具が群れて生まれる。夜な夜な藪に集まっては「古蓑、古笠、古太鼓、続いて古下駄、古破子、どんどんぱきぱき、ばっさばさ」と歌い踊るが、人の気配を察するとぴたりと歌をやめる用心深さも持つ。片方だけ鼻の欠けた下駄が音頭を取る。