婚礼の宴に紛れ込む、化けの下手な古狸
化け狸
宴はにぎやかに始まった。主役の顔をした何かが、馳走を貪り食っている——それに気づいたのは、吠え続ける犬だけだった。
Overview
家主になりすまして婚礼の席で飲み食いした狸。犬に吠え立てられて床下に逃げ込んだところを捕まった。
Encounter
婚礼など人が大勢集まる祝いの席に、家の当主が姿を見せずにいる隙をついて入り込む。式を仕切る当主として振る舞いながら、実は当人になりすました化け狸ということがある。
Lore
岩手県のある村で大正のはじめに起きたとされる話では、婚礼のある家で他所へ出かけたまま戻らない大家の旦那の代わりに、犬に吠え立てられながら雨戸を蹴破らんばかりの勢いで「旦那」が駆け込んできた。式を急がせ、獣のようにご馳走を食い散らかしたが、まもなく本物の旦那が詫びながら現れたため偽者と知れ、犬をけしかけると床下に逃げ込み、引っぱり出すと大きな古狸だった。この話は佐々木喜善が編んだ『聴耳草紙』(昭和6年刊)に記されている。
Traits
化け狸は人間の姿、それも家の当主のような身近な人物に化けて宴席に紛れ込み、馳走にありつく。ただし化けの皮は完全ではなく、がつがつと粗野な食べ方をしてしまい、そこから正体を勘づかれることが多い。犬を苦手とし、吠え立てられると床下など狭い場所に逃げ込む習性がある。