薄が目に生い茂る髑髏の妖怪
卒都婆小町
秋風が薄を揺らすたび、そこにいるのは亡霊ではない。ただ、上の句の続きを待つ声がある。
Overview
小野小町の成れの果てとされる髑髏。晩年に都を離れて東国をさすらった小町の亡骸が野に晒され、眼窩からすすきが生え出たと伝わる。風が吹くたびに、和歌の上の句だけを繰り返す声が漏れるという。
Encounter
奥州(東北地方)八十島の野辺に現れるとされる。秋の夜、旅人が上の句だけを詠む細い声を耳にし、辿り着いた先のすすきの茂みに、目の穴から穂を伸ばした白い髑髏が転がっているという。
Lore
在原業平が東国流浪の途中、夜更けに「秋風の吹くにつけても あなめあなめ」と上の句だけを詠む声を聞き、辿ると目の穴からすすきが生えた髑髏を見つけた。土地の者にそれが小野小町の成れの果てと聞き、業平は「小野とは言はじ薄生ひけり」と下の句を詠んで弔ったと、鎌倉初期の『無名抄』『古事談』に伝わる。
Traits
声は上の句だけで途切れ、下の句が返されるまで同じ一節を繰り返すという。生者に直接の害はないが、和歌の心得のない者では応えようがなく、聞いた者はいつまでもその声に付き合わされることになる。
秋風の吹くにつけても あなめあなめ 小野とは言はじ薄生ひけり
無名抄